朝食を作り終えて真白の部屋へ行き、一応ノックをしてから中へ入った。案の定真白はまだ眠っているようで肩まで薄い布団を被って扉の方を向いていた。ゆっくりと近づいてベッドの横にしゃがみ込むと、真白が泣いているのが見えた。
「……真白?」
「隼人、」
「起きてたのか?」
「うん。起きたら泣いてた、だからしばらく動けなかった」
呼びかけるとすぐに真白は目を開いた。俺の問いかけに答えたあと目を伏せてそっと体を起こした。俺が立ち上がると真白はベッドから下りて抱きついてきた。ぎゅ、と腰に手を回してくるから相当悲しい夢を見たのだろうと推測された。
「夢、見たんだろ?」
「……すっごく、すっごく、悲しい夢だった」
「話せるか?」
「うん……。最初は楽しい夢だったの、隼人と一緒に遊んだりして。だけどだんだん……夢の中の私は隼人のことを思い出せなくなっていって、」
真白の頭を撫でてやる。少しでも落ち着いて話せるように……気休め程度、だけれど。話している途中から真白はまた泣いているようだった。体が震えている。体に回している左腕にぐっと力を込めた。
「最後には、忘れちゃうの。貴方は誰って隼人に尋ねるの。そこで目が覚めた。……いつか私もそうなっちゃうのかな。嫌だよ、隼人」
「大丈夫だ、真白、安心しろ。真白が俺を忘れたら、何度だって思い出させてやる」
「……ありがとう」
「まぁそれ以前に、俺を忘れさせたりしねぇよ、絶対にな」
真白の目を真っ直ぐに見つめて伝えた。真白にも俺の想いは届いたみたいで笑ってくれた。短くキスをして、朝食が出来ていることを言うといつもの明るい声で返事が来た。もう心配いらねぇなと思って真白と部屋を出た。
(2012.02.22)
遅すぎですがごっきゅんお誕生日記念でした!