一人暮らしの武の家に武と二人きり。武は大学に入ってからは小さな一軒家を買ってそこで生活をするようになった。私はと言えばまだ親元で家族と暮らしている。時々武の家に泊めてもらうこともある。長いときで一ヶ月くらい。
「武、」
「どうした?」
武にぎゅっと抱きついた。中学の時でさえ高かった身長は更に伸びて今はもう180を越えて187くらいあるんじゃないかと思う。包み込まれる感じがとても心地好くて私は好きだ。だからこそ、私は。
「綱吉くんの為に……ボンゴレ10代目の為に、死ぬ覚悟はある?」
「……あぁ。当たり前だろ」
「そ、か」
「どうしたんだよ真白、突然そんなこと」
武が好きで好きで仕方がない。どうしたらもっと武は私を見てくれるだろうと何度も考えた。どうしたら武は私だけを見てくれるようになるだろうと何度も考えた。だけどこれといった答えは見つからなかった。だからこそ、私は。
「好きだよ武」
「俺も、真白が好きだ」
愛の言葉を頻繁にくれるし私を愛しているという証拠も沢山くれる。けれど武は私だけを見ているわけじゃない。私の他にも綱吉くんや隼人くんや恭弥先輩リボーンくん了平先輩ランボくんイーピンちゃんスクアーロさんベルくん……色んな人を見ている。だからこそ、私は。
「武」
「、真白?」
「いっしょに、」
「一緒、に?」
袖の中に潜ませていた小さなナイフを取り出す。折り畳み式の刃が長いもので手に入れるのに苦労した。武に気づかれないようにナイフを開いて準備を整える。
だって武は私だけの武でしょう?私は武以外の誰も見ていないというのに、武は他の人も見るだなんてそれはずるいし、何より私が嫌だ。武はずっと私だけを見ていればいいんだ。私はずっと武だけを見るから。
「真白、」
「私とでも、いいよね?」
そう言って私は武の心臓にナイフを突き刺した。そのまま私の心臓にも刺さるように角度を綿密に計算して。
貴方が悪いんだよ?
(真白、どうして)
(だって武は私だけを見てはくれない)
(俺はいつだって真白だけを、)
(ううん私だけじゃない。他の人も見てる。だから)
(一緒に?)
(そう。一緒に死んだの)
……だけど悪いのは私、独占欲が強すぎる私だってことは最初から知ってた。
(2010.05.17)