俺が壊した真白の家は、本当に一時間で元通りになった。
驚く俺を余所に、真白は知り合いに礼を言って、少しのお金を払っていた。
次の日、俺はギターの音で目を覚ました。
「ギターの、音……?真白が、弾いてるのか……?」
眠い目を擦りながら、まだ半分寝ている状態の頭で物を考え、音のする方へ足を進める。
着いたのは、リビングだった。
リビングの床にあぐらをかいて座って、真白がギターを弾いている。
「真白、」
「あっ、檜佐木さん!起きたんですね!今、ご飯用意します」
俺が声をかけると、真白はすぐにギターを弾くのをやめた。
近くのソファにギターを立てかけて、キッチンへ走っていってしまった。
俺はその真白のギターを手に取り、真白がしていたようにあぐらをかいて床に座る。
真白みたいに上手くはないが、茶渡に教えてもらってからは、最初の頃よりだいぶ上手くなったとは思う。
少しだけ音を確認してから、思いついた音を適当に鳴らして、音楽にしてみる。
「ギター、お弾きになるんですね」
「少しだけ、な。真白程上手くねえけど」
コトリと音を立てて皿を机の上に置いて、真白は拍手をしてくれた。
きっとまだまだ下手な俺の音を、真白はキッチンで聞いてくれていたに違いねえ。
ご飯出来ましたよ、と真白が言うから、俺は真白のギターを元あった場所に立てかけて、立ち上がった。
「なあ、真白」
「なんでしょう?」
「敬語、外せ。あと修兵な」
「え、と、えぇぇっ?!」
驚いてあたふたする真白に俺は、だって友達だろ、と付け加えると、それもそうだねと真白は案外あっさりと敬語を外して、名前で呼んでくれた。
真白が用意してくれた飯は、純和食だった。
白ご飯に味噌汁、焼き魚、ひじきの煮物、ほうれん草のお浸し。
「美味え」
「ありがとう」
どれも美味かった。
こんなに美味い料理を食ったのは、いつぶりだろうか。
10分足らずで全部食べ終わって、ごちそうさまでしたと言えば、真白は茶を持ってきてくれて、俺が茶を飲んでいる間に食器を片付けてくれていた。
「修兵がギター弾けるなんて、吃驚した」
「そうか?俺、ギター好きなんだよ」
「そうなの?なら私、教えてあげる!」
「おう、サンキュ」
ただ上達したいという思いで、真白に教えてもらうことにした。
真白はギターや料理が上手いだけでなくて、教え方もめちゃくちゃ上手かった。
そりゃぁ、茶渡だって上手かったけど。
時々触れた真白の手に、内心ドキドキしてただなんて、誰にも言うなよ?
その日の夜、俺は真白の隣で眠った。
何故かって?
リビングでソファに座ってテレビを見てたら、真白が寝ちまって、いつの間にか繋がれてた手を真白が離してくれなかったからだ。
夜中に真白が目を覚ましたかどうかはわからねえ。
けど、朝を迎えて俺が目を覚ますと、真白はまだ俺の隣で眠っていた。
しばらくボーっとしていたら真白も目を覚まして、笑っておはようと言ってくれた。
なんだか、無性に真白を抱きしめたくなった。
(2009.10.23)