何が何だかわからないくらいの、物凄い音が聞こえた。
と同時に、激しい痛みに襲われた。
「っつ……。アイツ、俺だけは容赦ねえな……」
俺は、八席の部下と共に現世へ任務に来た。
長期滞在の任務だ。
空座町を虚から護るっつう、ごく普通の任務。
「あ、あの……っ」
不意にどこかから声が聞こえた。
起き上がって辺りを見渡してみる。
「大丈夫、ですか……?」
俺の右側に、一人の女の子が座り込んでいた。
余程驚いているのか、目を見開いている。
「怪我とか、ないですか……?」
「あぁ、大丈夫だ」
俺と彼女の周りは、瓦礫だらけ。
俺が……壊したんだよな。
「お前……ここ、切れてるぞ」
「へ?」
彼女の右の頬に手を伸ばす。
傷は浅いけど、少し切れて、血が出ている。
血を親指で拭ってやると、彼女は少し痛そうな顔をした。
「つか、俺が見えんのか?」
「死神さん、ですよね?黒崎くんみたいな」
黒崎が死神代行だって知ってんなら、納得いくな。
俺が見えてもおかしくねえ。
「あ、あの……」
「なんだ?」
「えっと、その、お名前を……」
言いにくそうにしながらも、彼女は言う。
名前、か。
つか敬語が気になる。
まぁ、癖なのかもしんねえけど。
「檜佐木修兵だ。お前は?」
「私……は、華紀真白です」
少しだけ目を輝かせて、彼女は俺の名前を聞いた。
少しだけ照れながら、彼女は名前を教えてくれた。
不意に、沈黙が流れる。
しばらくの間、俺と彼女はただじっと見つめ合っていた。
「ここ、真白の家、だよな?」
コクリと頷く真白。
やっぱりか……と俺は思い、少し後悔した。
次にアイツに会ったら一発ぶん殴ってやろう。
そう、心に決めた。
「なんか……悪いな、こんなめちゃくちゃにしちまって」
「全然いいんです!一時間あれば直りますから!」
一時間あれば直る、という言葉に、俺は首をかしげた。
どうして一時間あれば直るのだろうか。
そもそも、本当に一時間で直るのだろうか。
と、疑問が出てきたから。
「知り合いの人に、壊れた家を直すの専門の人がいるんです」
そんな俺に、真白は補足をしてくれた。
大丈夫なのかと問えば、大丈夫だと言葉が返ってきた。
どこからか真白は携帯を取り出して、電話をかけはじめる。
きっと、さっき言ってた知り合いにだろう。
電話を終えると、真白は俺を一階へ案内してくれた。
一階はあまり被害を受けていないようで、ところどころ物が落ちているくらいで他は普通の部屋だった。
リビングに俺は案内されて、椅子に座って待っていると真白が飲み物を持ってきてくれた。
俺がそれを受け取るとチャイムが鳴って、真白の知り合いが来た。
その知り合いに、俺は見えていないようだった。
「あの、檜佐木、さん?」
「どうした?」
「現世へは、任務で?」
「ああ、そうだ」
呼び方とか、敬語とかが、やっぱり気になる。
けどそのことはあとで言おうと、出しかけた言葉を喉の奥に引っ込めた。
真白はしばらく考えるような素振りを見せたあと、口を開いた。
「泊まるところとか、決まってますか?」
「いや、特に決まってねえが……」
「じゃ、じゃあ!私の家でよければ、お泊めします!」
「いいのか?」
はい!と、真白は目を輝かせて答えた。
だから真白の言葉に甘えて、任務の間は真白の家に泊めてもらうことにした。
(2009.10.22)