沢田綱吉率いるボンゴレファミリー10代目が始動する、ということで私はそれを阻止しようとする敵対ファミリーを撃破すべく、奔走していた。幼い頃からヴァリアーに所属していただけあって暗殺はお手の物だ。今は綱吉に引き抜かれて、綱吉直属の部下になっている。

もうかれこれ何日が経ったのだろうか。それすらわからなくなるくらい、私は戦っていた。戦って戦って戦って、ただひたすら敵を倒す。命を受けた敵をほとんど倒し終わった頃、残党と思われる奴らに奇襲を受け、我ながら無様に地に這いつくばっていた。


「ああ……最期にもう一度、武に会いたかった……」


呟く声は、空に消える。周りには私と同じように血を流して倒れる敵の数々。残党は何とか始末できたけれど、思わぬ深手を負ってしまってきっともう私はボンゴレには帰れない。このまま死んでいくんだと、思った。


「真白!!」


正式に綱吉ファミリーが始動するところ、見たかったなと頭の片隅で考えながら、意識が遠のこうとしていたときだった。朧気に武の声が聞こえて、だけどこれは私がもう死ぬからと脳が聞かせた幻聴なんだと笑いが込み上げた。その笑いは声になることはなかった。


「もう、すぐ……朝日が、昇るの、に……」


きらきら眩しいお天道様を見ることなく、死んでいく。アサシンである私には見る価値もないということか。一瞬武の歪んだ顔が見えた気がして、瞼は閉じられた。


「……真白、」

――声が、聞こえる。誰?


「真白、死ぬなよ」

――無理だよ、もう、死んでる。


「なあ、真白、」

――死んでる?声が聞こえるのに?


「目を覚ませよ」

――武の声だ。私は生きてるの?


「真白」


その声に起こされるように、真っ白な光が視界を覆う。靄がかかっているようでほとんど何も見えない。だけど、それでも、届いたんだ。


「真白……っ!」

「た、けし、」


武の声が聞こえる。武がそこにいる。見えないけれどそれだけははっきりわかった。


「よかった……生きてる……」


次第にクリアになっていく目の前に、泣き崩れる武が映る。全身の感覚が取り戻せないなか必死に腕を動かして、武の頬に手を寄せる。目を見開いて武は私に口づけてきた。


「武、わたし、死んじゃったかと、思った」

「俺も……っ。医者は眠ってるだけだって言ったけど……気が気じゃなかった」

「眠ってただけ……?」

「ああ、そうらしいんだ。だけど本当によかった」


改めてあの日のことを思い出してみると、深手は負ったものの、致命傷と言えるほどのものはなかったような気もする。それに戦い続けて何日も寝ていなかったことも確かだ。疲れも相まって、バカみたいな考えになっていただけのようだった。


アサシンは黎明に眠る

死と間違えるほどの、深い眠りを。



(2018.07.06)



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