三回ノックをして失礼しますと言葉を紡ぐ。扉を開けて中に入ると綱吉がペンを置いたところだった。執務机を回って椅子のある方から綱吉へお茶とお菓子を出す。と、不意に座ったまま綱吉が私の腰に抱きついてきた。
「綱吉?」
「真白……」
「どうかした?何かあったの?」
「俺……やっぱり怖いんだ」
綱吉を抱きしめ返して頭を撫でてあげる。ぽつりぽつりと、綱吉は色々なことを話し始めた。獄寺くんのこと、山本くんのこと、雲雀くんのこと、ランボのこと、クロームやハルや京子のこと。いつになく弱気な綱吉は、まるで昔の綱吉だった。
「信じてるんでしょう?みんなのこと」
「うん。信じてるからこそ、怖いんだ。……失う、ことが」
「そう、ね」
「真白だけは、いなくならないでくれ……」
上目遣いに私を見て綱吉は呟いた。そんな綱吉に私は唇を寄せた、いなくならないよと思いを乗せて。それからしばらく綱吉は私の腰に抱きついたままだった。私はその間中ずっと頭を撫でていた。
(2012.03.19)