遂にやってしまった。流れる景色をぼんやりと眺めながら不意にそんなことを思う。目の前の座席に座る神田も同じように窓の外へ意識を向けている。私はそんな神田を訳もなくじっと見つめた。
「……何だ?」
「神田は、後悔してない?」
「教団を抜けたことか?」
「うん、そう」
視線に気づいたのか、神田は私を見る。尋ねた私の顔がそんなにも歪んでいたのか、私の隣へ座り抱き寄せた。そして後悔なんてしてねぇよと優しい声で言う。神田の柔らかい口づけがそれを証明してくれた。
「真白、」
「ん?」
「好きだ……真白……」
「私も好きよ、神田」
さっきとは違う激しいキスに、私はまた苗字で呼んでしまったことに気づく。深い口づけの合間にユウ、と名を呼べば、重なる唇に優しさが宿る。ゆっくりと離れゆくことに淋しさを感じながらも次の神田の行動に期待をした。
(2012.03.30)