明日午後二時私の家、とだけ獄寺に連絡をした。獄寺はすぐに返事をしてきてどういうことだと訊いてきたが私はいいからと曖昧に誤魔化した。そうすると不満な雰囲気を醸し出しつつも承知してくれた、よっしゃ。



「で、何なんだよ」

「いいからいいから、早く上がって」

「変なこと企んでんじゃねぇだろうな」

「ぜーんぜん考えてないよ変なことなんて」



次の日になって時間ぴったしに獄寺は来た。仮にも私は獄寺の彼女だと言うのに獄寺は私に警戒心剥き出しだ。どこの野良犬だコラ。私がそんな変なことを企んでいるように見えるのだろうか。まぁ生憎獄寺にはそう見えているようだが一体どう見ればそう見えるんだ。



「さっそく本題だけれども」

「何だよ」

「獄寺、最初に告白してくれたとき以外に好きって言ってくれないでしょ。だから、今日は私に向かって愛を叫んで」

「……は?」



怪訝な顔をする獄寺。無理もないだろうが私が言ったことは紛れもない事実なのだ。別れを切り出してこないということは獄寺はまだ私を好きだということ。それならばはっきりと愛を明示してもらおうではないかという作戦だ。いや、作戦と呼べるようなものではないが。



「ほら、早く」

「……ちっ」

「舌打ちしなーい」

「それにしても、遠くねぇか?俺と真白の距離」



そこは気にしちゃあいけないよ獄寺くん、と私は言う。獄寺はさして気にしていないみたいで単に不思議に思っただけのようだ。早くーと獄寺を急かすけれど獄寺は一向に愛を叫んではくれない。……ツンデレだから仕方ないか。



「……真白が好きだ」

「え?何て?」

「真白が、好きだ」

「聞こえない、もっと声を大きく!」



徐々に獄寺の顔が赤くなってくる。それが面白くてついくすりと笑ってしまった。どうやら獄寺は気づかなかったみたいで悶々と一人悩んでいる。可愛いなあもうこんちくしょーめ。今すぐ駆け寄ってぎゅーって抱きしめたい。



「真白が好きだ」

「もっと大きく!」

「真白が好きだ!」

「まだ聞こえなーい」



本当はばっちり聞こえているのだけれどあんなに可愛い姿を見せられたら虐めたくなる。だから私は敢えて聞こえないフリをして獄寺に好きだと言わせる。もう笑いたくて笑いたくて仕方がない。どうしてそんなにツンデレで可愛いのですか獄寺くん!



真白が好きだ!

「んー、もうちょい大きく!」

「はぁ……。何度も言わせるなバカ!真白が好きだっつってんだろーが!

「ふふっ、それなら合格ね」



私は衝動のままに真っ赤になった獄寺に抱きついた。獄寺は耳まで赤くして私の背中に腕を回してくれた。やっぱ可愛いなあもうこんちくしょーめ。意地悪してごめんね獄寺、と私は心の中で獄寺に謝った。



(2011.01.02)



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