「まさか、こんなにも早くバレてしまうなんて思わなかったわ」
「最初から疑っていたからな」
「私が入隊した時から?」
「ああ。女が入ってくるのは珍しい」
「今まで恋人としてやってきたのも、演技?」
「……それは、」
「まあどっちでもいいわ。私は楽しかったもの」
「演技じゃねぇ。俺は確かに真白が好きだった」
「、ありがとう。それが聞けて嬉しいわ」
「アジトには戻らねぇのか」
「私がアジトに戻ったら、ヴァリアーがなめられてしまうじゃない。スパイを見抜いたのに殺せず挙句敵に情報が知れ渡った、なんて、とてつもなく間抜けよ。それも女だと余計にね」
「真白側にとっちゃあ好都合だろうが」
「そう、ね……。けれど私はザンザスを選んだのよ。ただし誇りは忘れていない」
「それで真白は、死を選ぶと?」
「ええ。もちろんザンザス、貴方が殺してくれるんでしょう?」
「真白が望むなら、な」
「望むわ。私はザンザスに殺されることを望む」
「……真白」
「なぁに?」
「お前が生きる手はねぇのか」
「あら、ザンザスでも、そんなことを言うのね」
「真面目に言っている」
「ごめんなさい。嬉しくて、つい。私が生きる道か……」
「真白は死んだと噂を流す」
「そんなの生きている心地がしないわ」
「俺の前でだけ生きていればいい」
「それなら、私は貴方の心の中で生きるわ。誇りは忘れていないって言ったでしょう?」
「真白……、」
「大丈夫よ、きっとまた会えるわ」
「真白は死ぬのに、か?」
「ふふ、そうね。でも何となくそんな気がするのよ。この時代に生まれ変わるのか……来世なのかは、わからないけれど」
「俺は」
「今一緒にいたい、のよね?」
「……」
「私は……私の心は、ずっとここにあるわ。ザンザスの中に、ずっと。貴方が私のことを想っていてくれる限り、ね」
「真白、お前は、」
「そんなことはないわ。怖くて仕方がないもの。だから、お願い、早く殺して」
「……短い付き合いだったな」
「ええ……。だけど、今までで一番幸せだったわ。ありがとう、ザンザス」
「あぁ」
弾は静かに貫通し床に倒れた。
その体をぎゅっと抱きしめた。
最期にゆるく微笑んで逝った。
(2012.02.21)