ただいま、そう言って家の扉を閉めた。いつもならすぐに真白がお帰りなさいと出迎えてくれるのに今日は来ない。靴は……誰のだ、この男物。深くは考えずにノックもせずに真白の部屋の扉を開けたがいなかった。リビングの扉を開けると、
「何……やってんだ、よ」
「、助けてユウ!」
「お前、真白に何を……ッ!」
「うぐ……っ」
真白が叫んだ瞬間、真白の上から逃げるようにソファを下りてこっちへ向かってきた男を思い切り殴った。男は部屋の端へ飛んで壁にぶつかったが、すぐに立ち上がって家からも出ていった。俺は真白へ歩み寄る。
「何をしてたんだ」
「あいつが勝手に……」
「家にあげたのはお前だろ?」
「そう、だけど、」
乱れた服を直しながら真白は答える。その真白が座っている方とは逆の端に鞄を置いて上着を背もたれにかける。俺を見上げる真白は眉を下げて涙を滲ませていた。抱きしめてやりたかった。
「つまり、俺じゃなくてもいいんだろ」
「違う!」
「男を家にあげる意味、わかってんのか、真白」
「わかってる、だけどユウがすぐに帰ってくると思って……」
涙が頬を伝った。それと同時に真白は俯いて両の拳をぎゅっと握った。俺は真白の隣に座ってぎゅっと抱きしめた。俺の名を呟いた真白はシャツを握って静かに泣いていた。
「……悪かった、言い過ぎた」
「私の方こそごめんなさい」
「真白、もう、泣き止んだか?」
「うん、ありがとう、ユウ」
抱きしめる腕を解くと真白は本当に泣いていなかった。触れるだけのキスをして立ち上がると、真白が鞄と上着を手に取って先に歩き出す。その後ろについて部屋まで行った。
(2012.02.07)