その言葉が、真白の最期の言葉だった。
ラビ、と呼ぶ声が聴こえて、少しの間閉じていた目を開ける。
真白が、哀しそうな顔で笑っていた。
見ているのが、とても辛くて……。
思わず、触れるだけの短いものだったけれど、キスをした。
「らび……、ごめんね、ありがとう……」
「真白……?!」
「ら、び……」
「真白っ!真白っ!真白ーっ!」
人工呼吸器を外したままだったのがいけなかったんだ。
キスのあと、すぐにもう一度つけてやれば、真白は助かっていたかもしれない。
俺の中にはさっき以上の後悔が襲ってきて、その後悔をどうすることも出来なかった。
真白の手をぎゅっと握って、俺は名前を呼び続けた。
戻ってきてくれと、願いを込めて。
……何をしても、戻ってこないとわかっていながら。
だけど信じたくなかった。
真白が死んだなんて……。
まだ生きていると、ただ疲れたから眠って休んでいるだけなんだと、思いたくて。
俺の頭は混乱する一方で、何も考えられなかった。
今でもまだ引きずってる。
真白のことを後悔してる。
俺がもっと強く言っていれば、真白が死ぬことはなかったんだって、そう思う。
「真白……」
帰ってこいよ、と、何度呟いたことだろうか。
わかってる、もう真白はいないことくらい。
わかってる、もう真白が帰ってこないことくらい。
わかっているからこそ、そう願う。
辛いんさ、真白がいねぇなんて……。
ブックマンに心はいらねぇってわかってるからこそ、真白を好きになっちまったのと同じなんだ。
「なぁ、真白、」
今自分がどこにいるかさえわからねぇ。
飯食ってるかとか、風呂入ってるかとか、任務やってるかとか、そんなのも一切わからねぇ。
やってるのかもしれねぇけど、やってねぇのかもしれねぇ。
とにかく最近は、全然記憶がない。
真白が死んだあの日から、俺の時計は止まったまま。
何も記憶しないし、ピクリとも動かない。
「俺もそっち行きてぇさ……」
(2009.08.29)