それは、ある日の出来事。
真白はいつもの場所で、いつものように鍛錬をしていた。
前日、疲労でぶっ倒れたというのにも関わらず。
「真白、」
「ん?」
「今日くらいゆっくりするさ」
「鍛錬は、日課だから」
休むということをしなかったから、真白は倒れた。
なのに真白は、それをわかっていないのだろうか。
……いや、わかってないはずはない。
わかっているけど、日課だからと自分を追い込んでいるんだ。
「今日はやめとけ、真白」
「だめだよ、やらないなんて」
「やる方がだめに決まってんだろ!」
「ラビ……?」
真白にキスをした。
乱暴にじゃない、出来るだけ優しく。
俺の想いが伝わって欲しいという願いを込めて。
「真白は、休まなきゃいけないんさ」
「休む?」
「休養も鍛錬の内だって、何回も言っただろ?」
「そう、だけどさ」
今度は真白を抱きしめた。
やっぱりさっきと同じように、同じ願いを込めて、優しく。
だけど強く、強く、壊れるくらいに。
「昨日真白が倒れたとき、俺すっげぇ怖かったんさ」
真白がいなくなっちまうんじゃねぇかって思ったら、すっげぇ怖くて……。
この世に真白がいないとか、考えられねぇんさ。
もしこの世に真白がいなくなったら、俺どうしていけばいいかわからねぇ。
『大丈夫だよ、ラビ。私はずっとラビの傍にいるから』
「もう、無茶だけはしないで欲しいさ……」
俺の背中に、真白の腕が回った。
筋肉がついているはずなのに、その細い腕が。
その日は結局、俺の説得も虚しく、真白は鍛錬をしていた。
少しは、いつもより短かった気がするけれど。
どうしたら真白を止められるかがわからねぇ。
何とかして、真白を休ませなきゃならねぇってのに……。
俺、どうしたらいいんさ……。
なぁ真白、何でお前は、そんなに無茶ばっかりするんさ……?
(2009.08.29)