いつもいつも、#真白は俺の言うことなんて聞かなかった。
初めて出会ったときも、真白は鍛錬をしていた。
デートとかも確かに沢山した。
けれど俺の記憶にあるのは、鍛錬姿の真白の方が多い、圧倒的に。
手を繋いだときとか、キスしたときとか、体を重ねたときとか、そういうのも一瞬一瞬瞼に焼き付いてる。
けどやっぱり、一番に思い出すのは真白が鍛錬している姿。
真白は、無茶しすぎだったんさ……。
「まだまだァ!」
目の前で戦っているのは、真白。
戦っている、と言っても鍛錬なのだけれど。
真白はいつもこんな感じだ。
毎日毎日、百人抜きっつって百人の相手を倒していく。
「真白!」
「あと五人だから、大丈夫ラビ」
いつも言われる台詞だ。
もう聞き飽きた。
だけどこうしていつも鍛錬を見守っているのは、真白が好きだから。
もし真白が倒れたときに、一番に傍に行ってやれるように。
倒れたときに、一番に支えて、受け止めてやれるように。
「ふぅ、終わったぁ」
「そんなことばっかしてたら、いつか真白、倒れちまうさ」
「大丈夫だって、そこらの女と違って、柔じゃないから」
「そうは言っても……」
大丈夫とまたふわりと笑って言われて、結局俺はそれに負けてしまう。
時にはちゃんと怒ってやらねぇといけねぇってことは、わかってる。
だけど真白が一度笑ってしまえば、怒るチャンスを逃してしまうのだ。
真白は、そういう奴。
「たまには丸々一日、休みの日くらい作った方がいいさ」
「そーかなぁ」
「体休めるのも、鍛錬の一つだろ?」
「……だね」
真白は納得はするけれど、それを実行に移しはしない。
前に一度、俺が無理矢理休ませたこともある。
でも真白はそれに怒って、そのとき初めてケンカしたんさ。
強制はよくないってわかってるけど、そうまでしなきゃ真白は休むということをしない。
休まない方が、体に負荷がかかる、よな……。
「真白、」
「ん?」
「明日どっか遊びに行くさ」
「遊びに?」
明日は任務ないからと言えば、珍しく真白は賛成してくれた。
(2009.08.29)