中二になってから、一ヶ月くらいが過ぎた。
少しずつ少しずつだけど、春の温かさは去っていった。
担任の先生が、席替えするぞと言ったのは、五月にしては四月のような陽気の日。
席順は決めてきたからと言って、担任の先生は黒板に席順の書かれた紙を貼ってから朝のホームルームを終えて、教室から出ていった。
一時間目までに席替えておけよ、と一言残して。
ツナと獄寺と一緒に見に行くと、俺の席は以前とさほど変わっていなかった。
周りには誰がいるのかと確認していると、俺の名前の右側に、とある名前を見つけた。
“華紀”
思わず、二度三度、見直してしまった。
だけどそこに書いてある名前は、どこからどう見ても“華紀”で。
「よかったじゃん、山本」
「ん?あぁ!」
ツナもそれに気づいたのか、俺に話しかけてきてくれた。
獄寺は、相変わらず。
華紀を見ると、華紀も相変わらず、笑っていた。
……俺最近、よく華紀を見てる。
もしかしたら好きだって、バレてんじゃねぇか?
少し考えを巡らせている間に、各々席に着き始めていた。
時計を見ると、あと一分くらいでチャイムが鳴る。
俺もツナたちと一緒に、新しい自分の席に座った。
四時間目までは、何もなくていつもと同じ時間を過ごしただけだった。
そんな俺の時間に変化が起きたのは、五時間目のこと。
「あ、あああああのっ、山本くんっ!」
「ん?どうした?」
「えっと、その、教科書……忘れた、から、見せてくれない、かな?」
「おう、いいぜ!」
五時間目が始まる直前のこと。
華紀が、俺に話しかけてきてくれた。
普通に接したつもりだけど……俺、どっか変だったり、してなかったよな?
ありがとう、って、華紀はいつものあの笑顔で言ってくれた。
「山本くんっていつも授業中寝てるけど、そんなに部活大変なの?」
「んー、たぶんな。俺は楽しいから、大変だとは思わねぇんだ」
「そうなんだ。やっぱり好きなこと出来るって、いいよね」
「あぁ、そうだな」
五時間目だけは、寝ずに華紀と話していた。
共通の好きなものとかはなかったけど、何故か会話が弾んだ。
少しだけ先生に怒られたりもした。
だけどそんなことは笑って忘れてずっと話していた。
その時間だけで、俺は華紀がすっげぇ好きになったように思う。
この日を境に、俺と華紀は仲良くなった。
家の方向が一緒だっつーことを知って部活のない日は一緒に帰るようになったし、顔を合わせれば必ず少しでも会話をした。
相談したりされたりもした。
俺は華紀のことを“真白”、華紀は俺のことを“武”って名前で呼ぶようにもなった。
ツナや周りに、付き合ってるのかと訊かれるくらいに仲良くなって、よく二人で笑っていた。
(2009.10.25)