華紀真白は屋上で一人物思いに耽っていた。


そこへ、三人の男の影が向かってくる。

何か言い争いながら、

三人共に落ち着いて、

だけととても熱く、

ゆっくりと、

急いで、

彼女の元へと歩を進めている。


向かって左から、

獄寺隼人――ゴクデラ・ハヤト――

沢田綱吉――サワダ・ツナヨシ――

山本武――ヤマモト・タケシ――



「「「真白」」」



三人が同時に彼女の名を呼ぶ。その声に、彼女は彼らを振り返った。驚いた顔。真剣な瞳。見つめ合った四人の間を吹き抜ける風。揺れる髪。

沈黙。

沈黙。

まだ沈黙。

不思議そうな顔をして、少し首を傾げている真白。やはり真剣な顔の三人。



「好き、なんだ」「好きだ」「好きなのな」



三人が同時に言葉を発す。同じ内容。更に驚く真白。



「え、と……」



口を開いたはいいものの、真白はどのように返事をすれば良いのかわからず、詰まる。更には隼人、綱吉、武の三人からの真剣な強い眼差しに、戸惑う。隼人から順に三人の顔を見、視線を一瞬だけ合わせると、そのまま俯いてしまった。

何も言わない。

待つ。

待つ。

沈黙。

――声が、響いた。



「真白は、誰が好きなんだ?」



綱吉。



「好きな奴、いるんだろ?」



隼人。



「この中にいねぇなら、言わなくていいからさ」



武。



「私は、」



真白。


答えを出しかけたとき、三人が同時に、「俺だろ?」と問う。また、真白は戸惑う。

沈黙。

……口論。



「真白は俺が好きなんだって」

「なわけねーだろ野球バカ!俺だろ、俺」

「獄寺くんは違うよ。真白は、俺が好きなんだ」

「いくら10代目と言えど、今回ばかりは譲れません!」

「二人とも落ち着くのな。真白は、獄寺にもツナにも恋愛感情なんて持ってねぇって」

「あの!」



真白が声を発したことで、三人の口論が止まる。沈黙。言葉を探す真白。初めから変わらず――一分(いちぶ)の狂いもなく同じの、三人の揺るぎない瞳。

戸惑いのない眼を、真白は、向けた。



「私は、綱吉くんが、好き」



尻すぼみになりながらも、必死に想いを伝える真白。三人は呆然。だけど、

一人の微笑み。



「ほら、な、言っただろ」



綱吉が真白を引き寄せる。驚きながらも、真白はすっぽり綱吉の腕の中に収まる。

隼人と武に見せ付けるようにキス。顔を真っ赤にする真白。妖しく笑う綱吉。

そのまま真白の手を引いて、綱吉は屋上を出ようと歩き出す。

扉に手を掛けた綱吉が隼人と武を振り返る。つられて、真白も。隼人と武も、綱吉と真白を見た。四人の視線が絡まる。……絡まる。




    離脱。



(2010.11.08)



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