「腹減った……」
ベッドの上に大股開きで座る
「真白お前、もう少し女らしく出来ねぇのか?」
綱吉が隣に座る
「出来ねーよ。いつからこんなだと思ってんだ」
綱吉を見る
「そういえば真白の過去、聞いたことないよな」
目が合う
「そうだっけか?俺、綱吉に話さなかったか?」
視線を逸らす
「聞いてねぇ」
少し不機嫌そうな声
「ふぅん、そか」
床を見る
「そこ普通教えてくれるところじゃねぇの?」
不満そうな声
「何だ、綱吉、聞きたいのか?」
綱吉を見る
「ああ聞きたい。真白が好きだからな」
真剣な目
「物好きだな綱吉も。まぁいい、話すさ」
軽く笑う
俺の過去はそんな大層なモンじゃねぇ。シリアスのsの字の欠片さえねぇただの過去だ。
俺の家は名門の武術道場だ。代々、道場の頭首は男でなければならないと伝えられている。過去数百年遡っても、道場の頭首には男しかなっていない。だが、親父の代になっておふくろと結婚してから、女しか生まれなかった。何度も子供は授かったが全て女だった。だから長女だった俺が男として育てられた。俺が実は女だったんだと気づいたのは小学校三年の夏のことだった。小学校に上がってから女として扱われていて何か変だとは薄々感じていたから、そのときに俺の中の疑問が全て解決した。俺は学校では男口調に男な行動ながらも身体測定や体育など男女に分かれるものは全て女として活動した。家ではまだ気づいていないフリをして男として武術を学んだ。しかしある時――確かあれは中学二年になった頃だ、俺は女だと両親に告げられた。
「そりゃ男が抜ける筈ねぇよなって話だろ?」
自嘲気味に笑う
「まぁ、確かにな」
真剣な声
「……何かあるのか?」
疑問と推量確信で綱吉を見る
「いや……俺が、真白を、女にならせてやろうか?」
自信たっぷりな瞳と笑顔
「綱吉が?」
眉間に皺が寄る
「ああ俺が」
妖しい笑顔
「今から俺に、女の言葉を使えとか言うのかよ」
半分呆れた
「もっと手っ取り早い方法がある、一つだけな」
またニヤリと笑う
「そんな方法、あんのか?」
更に眉間に皺が寄る
「ある。俺は真白が好きだって言っただろ?」
綱吉の手が肩に触れる
「つ、なよし……!?」
ベッドに押し倒される
「鳴けばいいんだ」
妖しい笑顔の綱吉が覆いかぶさる
「俺は一言も、綱吉が好きだなんて言ってねぇ。ましてや俺が、男として育てられたこの俺が!男を好きになれるとでも、っ!」
言葉の途中でキス
「俺の超直感なめるなよ」
さっきと変わらない笑顔
「なめるも何も、俺は綱吉に恋愛感情を持ったことなんてねぇ」
綱吉の瞳を真っ直ぐ見る
「真白が気づいてないだけだろ。真白は、俺が好きなんだ」
自信満々の声
「そんなはず!」
大きめの声で否定、素の声になる
「声が、女になってる」
それを指摘される
「綱吉!」
名を呼んで咎めようとする
「もういいだろ?女になれ、真白」
だけど無駄、またキス
その行為の間俺は女になっていたと綱吉は言う。が、俺にはわからねぇ。ただわかったのは、俺は綱吉が好きなんだということだけだ。
(2010.09.28)