いつも、いつも思うことがあるんだ。
毎日必ず思って、凄いなぁって尊敬しては、時々自己嫌悪してただひたすら泣いて。
つくづく自分は弱い人間だって、感じる。
「ツナ。ツナツナツナツナ。ツナぁ……」
「ま、真白!?どうしたの!?」
ツナの部屋の扉を開ける。
よかった、今はツナしかいないみたい。
がばっとツナに抱きつく。
ツナは後ろに倒れそうになりながらも、ちゃんと受け止めてくれた。
「ツナぁ……!」
なんかツナを見てたら凄く自分が嫌な奴に思えてくる。
涙が次から次へと溢れては零れていって、もう自分でも何を喋っているのかわからない。
不意に、ツナの温もりを感じた。
「落ち着いて真白。とりあえず、今は泣きたいなら思い切り泣こう?話すのは、それからでいいから」
「ツナ、」
ツナの温もりと、その言葉に、私は何故だかとっても安心出来た。
だからかどうかはわからないけれど、ツナの言うように、私はただひたすら泣いた。
ツナの、腕の中で。
どれくらいの間私が泣いていたかは、わからない。
「大丈夫?真白。落ち着いた?」
「う、ん……。ありがとう、ツナ」
「それで、一体何があったの?」
「ツナ……」
またツナにぎゅっと抱きついた。
なんだか今私が、とても醜い顔をしているような気がして。
そんな顔、ツナには見せられない、見せたくない。
「ツナは……ツナは、強いよね」
「え!?オレが強い!?」
「強いじゃん、とっても」
「そんなことないよ!オレなんかダメダメのダメツナだし……」
ツナはもう、ダメツナなんかじゃない。
運動も勉強も、少しずつだけど出来るようになってる。
それになにより、信頼出来る仲間がいる。
あぁ、そっか……私は、ツナに憧れてるんだ。
「ツナがダメツナって呼ばれてた頃、さ」
「真白……?」
「京子が好きだから、京子を見る為だけに学校に行ってたんでしょう?ダメツナってばかにされて、辛くても苦しくても」
ツナの腕の力が、強くなった気がした。
やっぱりツナは、もうダメツナなんかじゃない。
私の方がダメダメだよ。
「私なんて、ちょっと辛いことや苦しいことがあったら、すぐに逃げ出しちゃう。学校に行きたくなくなって、休んじゃう」
私はツナと違って、弱くて脆くて……人間として本当にだめだ。
嫌なことがあれば、私はすぐ逃げてしまう。
いつも逃げてばっかりで、立ち向かおうとしない。
「でもツナは、逃げたりしてない。どんなことでも立ち向かって戦って、頑張ってる。それに比べて私は……」
「オレが頑張れるのは、真白がいるからだよ」
「私が……?京子じゃなくって?」
「うん。真白が頑張ってるから、オレも頑張ろうって、頑張らなきゃって思うんだ」
違うよ、私は頑張ってなんかない。
私はただ逃げてるだけ、嫌なことから、何もかもから。
顔を上げてツナを見てみると、ツナは真剣な目を、真剣な顔をしていた。
私の大好きな、かっこいい顔。
「私は……」
「頑張ってなんかない、って、言うんでしょ?」
目を伏せると、ツナは私の頭を撫でてくれた。
その優しさに伏せた目をすぐ上げると、いつもの笑顔があった。
私はその笑顔に魅せられて、ツナから目が離せなかった。
「真白、いつもオレのところに来て、学校が嫌だとか疲れたとか愚痴零すけど、それでもちゃんと学校に行ってるじゃん。休みながらだとしても」
「それは、母さんが行けってうるさいから……」
「本当に頑張ってないなら、お母さんに行けって言われても行ったフリしてサボるはずだろ?」
返す言葉が見つからなかった。
ツナは、とっても成長した。
もう私の届くところにいる人じゃないのかもしれない。
ツナも私の傍からいなくなっちゃうのかなぁ……?
「オレは、」
「え?」
「オレは、真白の傍からいなくなったりしないよ。出来れば傍にいて欲しいんだけど……ダメかな?」
「私なんかが、傍にいていいの……?」
ツナにぎゅっと、優しく抱きしめられた。
これが、超直感っていうやつなのだろうか。
今、ツナは私の考えていることがわかったから、こんなこと言ったんだよね。
私はツナのやっていることは何か、詳しくは知らない。
何となく知っているだけ。
「オレが、真白の傍にいたいだけなんだけど、さ」
「ツナがいいって言うなら、私は傍にいたい。ずっと、ずっと」
少し見えたツナの顔は、真っ赤だった気がする。
だけどきっと、私もツナに負けないくらい真っ赤だ。
ツナの腕の中で呟いたありがとうが、ツナに聞こえたかどうかはわからない。
だけど、ツナの腕の力がぐっと強くなったことだけは、確かなこと。
(2009.10.22)