ずっと不安だった。

傍にいるときは、そんな不安はいつも消えてた。

けれど、家に帰って一人になると、無性に不安になった。

どうしてだかはわからない。


私は、彼を信じている。

それなのに、不安は消えてはくれない。


そんな矢先のことだった。


彼は大切な用事があるとかで、私の傍を離れていった。

二年経てば必ず帰ってくるから、と。

浮気なんかしないずっと真白のこと考えてるから、と。


別れ際にぎゅっと抱きしめられたときは、二年なんてあっという間に過ぎるだろうと思った。

気がつけば、隣に彼はいるだろうと思った。

彼がいなくても耐えて頑張っていけるだろうと思った。


……だけどそれは、単なる思い込みだったようだ。

半年が経った頃から私は、彼のいない淋しさを身に沁みて知った。


それからは毎日泣くばかり。

早く涸れてしまえと、何度思っただろうか。


涸れのいない淋しさを知った半年目から、一年が経った。

彼がいなくなってから、一年半。

相変わらず私は、毎日泣くばかり。

ろくに外にも出ない生活を送っている。


どう足掻いてもお腹は空くし眠くなるしで、食事と睡眠だけはまともだった。

そんな、ある日のこと。



「真白」



何日か分の食事や日用品を買いに行ったスーパーから帰ったら、彼はそこにいた。

私のベッドに座って、笑っていた。



「真白」



幻じゃないかと思った。


だけど、彼が私の名前を呼ぶ声が。

淋しさの余り抱きついた彼の温もりが。

私をぎゅっと抱きしめ返してくれた彼の腕が。


幻じゃないと、本物だと、私に告げた。



「らび……っ、会いたかったよぉ……っ!」

「俺も。俺も、真白に会いたかったさ」

「ら、びっ、らびぃ……っ」

「真白、」



涸れてもおかしくないんじゃないかってくらいの、涙が出た。

まだこんなにも沢山、涙は残っていたんだって、驚いた。


彼が私の名前を呼んでくれる。

それだけのことが、無性に嬉しくて、とっても心地が良くて。


何分泣いたかなんてわからない。

時間も気にせずに、私はただひたすら泣いた。



「真白」



気づけば彼が私の頭を撫でてくれていて、気づけば私の涙は止まっていた。


名前を呼ばれて顔を上げると、やっぱりキスをされた。

キスのあと、またぎゅっと抱きしめられる。


いつも決まってそうだった。

私が泣けば、彼は私が泣き止むまでぎゅっと抱きしめていてくれる。

私が泣き止めば、私の名前を呼んでキスをして、またぎゅっと抱きしめてくれる。


変わらない。

彼は、何も変わっちゃいない。



「真白、」

「な、に?」






(ただいま)
(おかえり、なさい)
(もう、どこにもいかないさ)
(……うん)
(ずっと、真白の傍にいる)
(約束、だよ?)



(2009.08.10)




ラビお誕生日記念でした。



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