わかってた。知ってた。全部全部。
アイツが、私だけを見てるわけじゃないってこと。
私以外にも、沢山付き合ってる人がいるってこと。
最初から、付き合いだした頃から、ずっと気づいてた。
だけど私は、好きだった。
アイツのことを、本気で。
私はいつだって自分の気持ちを殺して、アイツと付き合ってきた。
でも、私は変わった。
いや、変われたんだ。
貴方に出逢えたから……。
私は貴方に、恋をしてしまいました。
「はぁ……」
アイツと少し前に別れて、私は部屋にいる。
少し前にアイツは家に帰ったのだ。
「なにため息なんてついてんさ。幸せ逃げちゃうさ」
「ラビ。どうして此処に?」
「おばさんに入れてもらったんさ。で、何でため息なんてついてるんだ?」
扉のところに立っていたラビは、私の隣に座る。
私はベッドの上に座っている。
私なんかよりずっと長い足は、ベッドに座ると私なんかよりずっと折れ曲がっている。
「色々あるの」
「話してみるさ」
話していいのかどうか、少し迷った末に私はラビに話した。
アイツのことを、全て。
ラビは大きいなぁ、なんて思いながら、私はラビに色んな思いを零した。
時々相槌を打ちながら、ラビは私の話を真剣に聞いてくれた。
私はわからなくなった。
今本当にアイツが好きなのかどうかが。
ラビが好きなんじゃないのかって、思う。
「らび、」
「なんさ?」
「私、アイツのこと本当に好きなのかな」
「それは真白にしかわからないさ」
だよね、と私は言って、ラビから目を逸らす。
ぽすっと私はベッドに倒れ込んで、目を閉じた。
その状態で私は色々考えを巡らせる。
「けど」
不意にラビが言うから、私は目を開けた。
そしたらすぐそこにラビがいて、視線をずらすとラビは私に跨っていた。
「ラビ……?」
「今この状況で、そいつに助けて欲しいって思ってないんなら、きっともう真白は、そいつのこと好きじゃないさ」
助けて欲しいだなんて思わない。
寧ろ、このままラビに襲われてもいいって思う。
じゃあ私は、もうアイツのこと好きじゃないんだ。
冷めてるんだ。
「ラビ」
「なんさ?」
「このままラビに襲われてもいい、って思ってるなら、私は誰が好き?」
「……俺?」
曖昧な答えだった。
だけど私は確信した。
ラビが好きだと。
「らび、」
私が好きと言う前に、ラビにキスをされた。
嫌だなんて思うわけがない。
「真白は言わなくていいさ。俺が言うから。真白が好きだって」
ラビはそう言うと、また私の唇を塞いだ。
アイツには、別れるって連絡しなきゃ。
私は、ラビが好き。
(2009.02.16)