“死の島”と呼ばれ…
人々に――
千年伯爵にさえも恐れられ…
決して誰もが
近寄らない孤島…
そこに 二人 はいた。
どの大陸からも遠く離れ…
辺り一面に霧が立ち込める
“その場所”は…
二人にとっては絶好の場所…
足が竦む程の断崖絶壁に…
1メートルの視界さえ遮る霧…
身を切るように
薄暗い木々が覆い繁る
迷路の如きジャングル…
ここで会わずして
どこで会おうというのか。
二人が出逢ったのもまた
この“死の島”なのだから…
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「ユウ……っ!」
「真白、」
いつもの待ち合わせの場所にユウが着くとそこには既に真白がいた。真白はユウを見つけるとすぐに駆けて抱きついた。そんな真白を優しく受け止める。その姿は教団にいるときのユウとはまるで別人だ。
「会いたかった」
「ああ、俺もだ」
「会えないことがこんなに辛いなんて、思わなかった」
「そう……だな」
抱き合って会話をしながらも二人は意識を辺りにも向ける。誰も来ないと知りながら万が一の為に警戒は怠らない。恋人という関係になってしまった以上、敵同士の真白とユウにとって心が休まる時などないに等しいのだ。
「敵同士なんて、やめちゃえればいいのにね」
「敵の敵は味方だと言う」
「けれど、向かう敵がいなくなれば敵になってしまう」
「争う必要性を感じねぇ」
少しの間見つめ合って、触れるだけの口づけを交わしてから木の根に寄り添って座る。薄暗い森が二人をも暗くしているようにさえ感じられる。それを紛らわす為か否か――深い口づけ。ただ純粋に二人は互いを求め合う……。
「このまま、ユウと二人で死ぬまでここにいられたらな……」
「……真白」
「ん?」
「教団に、来ねぇか?」
目を見開いて驚く真白。期待と不安に揺れるディープブルーの瞳。互いに視線を逸らさず見つめ合い……何か言葉を紡がなければと思いながら相手の言葉を待つ。その沈黙を断ち切ったのは嘲笑うかのように低く鳴く数匹の烏。
「だけど私は、」
「教団に真白の顔や声を知ってる奴はいねぇし、データもない」
「……イノセントは?どうするの?私が適合者じゃなかったら?」
「真白は大丈夫だ。……俺と同じ、ニオイがする」
己の魂を削って武器に与える。危険なことだがこのまま敵でいるよりは遥かにいい。それがユウの考えだった。真っ直ぐ真白を見ていると突然真白は服をはだけさせた。訝しげな顔をするユウ。
「これ、」
「っ、これは……っ!」
「やっぱり、ユウ、知ってるんだ?」
「ああ……」
眉根を寄せたまましばらく真白の“それ”を凝視すると、強く真白を引き寄せた。突然の行動に真白は驚きもせずただ静かにユウの腕の中で体を預けた。そっと背中に手を回した真白の肩にユウは顔を埋めた。
「行こう、ユウ。そろそろ時間でしょう?」
「もう少しだけ、」
「少しよ?」
「、真白……」
甘えるユウの頭を優しく撫でる。数分だけそうしてから長く触れるキスをして、二人はその島を去った。二人の未来に期待と不安を抱きながらも一歩ずつ確実に歩んで行く。何事も無く幸せに暮らせるようにと願って。
(2012.02.02)
遅すぎですがユウお誕生日記念でした!