五日目



何だかんだで五日目がやってきた。この日は何だったか忘れたけれど何かしらあって授業がお昼までだった。友達の遊びの誘いを断って、家に帰る前にショッピングセンターへ足を運んだ。男物の服のコーナーへ行き適当なものをチョイスして、必要なものを買って回った。



「ただいま。買ってきたよ」

「早かったな葉鈴。おかえり」

「うん、何とかでお昼までだったから」

「昼飯作るよ」



その申し出は断って、修兵さまに着替えてもらった。修兵さまが着替えている間に私がお昼ご飯を作った。修兵さまは少し不満そうだったけれど、なんとか言いくるめた。お昼を作っている途中に修兵さまは戻ってきた。意外と似合ってるじゃないか!



「どうだ?」

「うん、普通に似合ってる」

「そう……なのか」

「もう一着も着てみてよ」



次に修兵さまが戻ってきたのは、ちょうどお昼ご飯が出来上がった頃だった。お皿に移してテーブルに運ぼうとしたときに修兵さまが目に入った。うん、これも似合ってる。最早何だって似合うんじゃないかとさえ思う。女装……なんて言葉が出てきたのは気のせい気のせい!



「似合ってる。ご飯出来たよ」

「さんきゅ。……着替えてくる」

「そのままでいい」

「あ、ああ……」



心なしか修兵さまは照れているようだった。私服を着た修兵さまとお昼をさっと済ませて、そのまま外出した。どうせなら早いほうがいい。しかし、だ。何だこの男は異常なくらいモテるじゃないか。さっきからどれだけ声をかけられているか……。逆ナンとか初めて見た。



「あ、あのっ!これから喫茶店にでも、どう、ですか!」

「悪いな、今はちょっと。また次会えたらな」

「すみません!一緒にお食事行ってもらえませんか……?」

「また今度な」



という具合に次から次へと……修兵さまも相手なんてしなけりゃいいのに。何でいちいち相手するのさ。……って、何だ私。修兵さまの彼女でも何でもないのに。修兵さまがどう対応しようと私には関係ない。適当に説明しながら近場を巡って、その日は帰宅した。



「おい、なあ、葉鈴」

「何?」

「どうしたんだよ、さっきから」

「別に何も」



黙々と夕食を作る。今は修兵さまと話したくない。自己嫌悪で忙しい。しつこくどうしたのか尋ねてくる修兵さまをあしらいつつ、夕食を完成させた。一人分だけテーブルに並べて、私はさっさと部屋に引っ込んだ。一旦家を出よう。このままじゃ駄目だきっと。



「葉鈴?何で一人分なんだよ?何かあったんだろ?」

「何もないってば」

「嘘つくなよ。話せって」

「うるさいな、何もないって言ってるでしょ!さっさと食べなよ!私はもう知らない!この家勝手に使って何でもすればいい!」



自分でも言っていることが支離滅裂なのはわかってる。だけど今は伝えたいことだけ伝えて家を出て行った。修兵さまが追いかけてくることを期待していたけれど、追いかけては来なかった。期待していただけで、そうなることは目に見えていたけれど。



『もしもし葉鈴?どうしたの?』

「今から行っていい?」

『うん、いいよ。泊まるの?』

「泊まる」



友達に電話をして一晩泊めてもらうことにした。きっとどこへ行こうと修兵さまなら見つけてしまうような気がするけれど、そんなことはどうだっていい。現実問題彼は何処へも行けないのだ。今日の出来事を思い出しながら電車で友達の家へ行き、一晩明かした。当たり前だけど修兵さまは来なかった。



(2013.02.12)


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