四日目。私が学校から帰ると修兵さまは何やら考え事をしているようだった。一応ただいまと言ってはみたけれど気づいていない。たまには考え事もするよねと考えながら、とりあえず部屋へ行って荷物を置き部屋着に着替えた。
「修兵?」
「……葉鈴。帰ってたのか」
「うん、ただいま」
「おかえり」
笑ってはくれたけれど、何かあるような感じだ。少しだけ心此処に有らずといった表現が合うかな。不安と嫉妬に似た感情が混ざり合って押し寄せてくる。悩んでる場合じゃないとそれに言われた気がして、思い切って訊いてみた。
「何かあった?」
「ああ、いやな、外に出てみてえなって思ってさ」
「外に?」
「葉鈴の世界、気になるじゃねえか」
人間って本当に単純だなと感じた瞬間だった。修兵さまのその言葉に今度はテンションがだだ上がりだ。だけど困ったな、死覇装で外なんて歩けば怪しまれることこの上ない。何かイベントがあればマシだろうけれど、本物の修兵さまだしなあ……。
「変装、するしかないよね」
「変装?」
「だってほら、私の世界じゃ修兵は漫画の中の人だもん」
「そういやそうだったな……」
色々考えた結果、私が服を買いに行くことになった。サイズとかよくわからなかったから実際に測ってネットで調べてみた。男の人ってこんなに大きいんだ……。それらをメモして、明日の放課後にでも行ってくると修兵さまに伝えた。
「さんきゅーな、葉鈴」
「え、ちょ、修兵!?」
「葉鈴っていちいち反応面白えから、イジメたくなんだよな」
「ならんでいい!」
不意にぎゅっと抱きしめられて戸惑う。どうしたものかと困っているとある考えが浮かんだ。このまま腕を回して抱きついちゃえばいいんじゃね?だって大好きな修兵さまだもの!こんな機会滅多にない!
「葉鈴……?」
「何?」
「……いや、何でもねえ」
「そっか」
思い切って腕を回してみた。想像以上に背中は広いし修兵さまの温度は伝わってくるし、修兵さまも腕の力を強めてくるしで動悸がハンパない。私今顔真っ赤だ。嬉しすぎるし恥ずかしすぎる。それに心地良い……。
「飯にするか」
「そうだね、まだ食べてなかったね」
「何作るんだ?」
「今日はオムライス」
名残惜しかったけれど修兵さまと離れて、そんな会話をする。努めて平静を保ったけれど危うく声が裏返りそうになった。心なしか修兵さまの頬が赤かったような気がしたけれど、もしそれが本当なら嬉しいかぎりだな……。今夜は二人で一緒にオムライスを作って食べた。