何だか人の温もりに包まれているような、そんな気がして目が覚めた。ぼんやりする視界に入ってきたものは黒。部屋に黒はおいてなかったはず……と起き上がろうとしたけれど出来なかった。ゆっくりと顔を上げると、
「……っ!?」
「ん……」
一瞬で頭の中がすっきりとした。私の目に映ったのは大好きな大好きな、檜佐木修兵さま!嘘だ嘘だと言い聞かせては何度も目を瞑っては確認したけれど、間違いなく修兵さまだ。袖のない死覇装といい顔の傷やテープ、刺青といい、修兵さまだと証拠づけるものしかない。
「あ、あの……」
「んー……?」
「起きてくださいっ!」
「ん……?」
うっすらと修兵さまの目が開く。その瞳は私を捉えて固まった。思考回路がまだおいついていないのか、私を解放してはくれない。早く離して欲しいと思いつつも離して欲しくないとも思う。だけど心臓は今にも爆発しそうで。
「お前、誰だ?」
「枢木葉鈴と言います」
「此処は……?」
「異世界、というやつですね」
修兵さまは特に驚く様子もなくすんなりと状況を受け入れていた。副隊長ともなると、こんなことくらいでいちいち取り乱していてはいけないのだろう。それにしても、この人はいつになったら離してくれるのか。
「葉鈴お前、すっげえ抱き心地良い」
「は!?何を……!?」
「良い匂いするし、スタイルも抜群だな」
「#%£$¥℃!?!?」
下になっている右手で胸からお尻まですっと撫でられて、ゆるく抱きしめられる。何だこの人、どこまで変態なんだ!いやそんな変態な修兵さまが大好きなわけだけれど!やばい、やばすぎる、色んな意味で死にそうだ。
「葉鈴、真っ赤」
「誰の所為ですか!」
「あ、俺は檜佐木修兵。修兵でいいぜ」
「話を逸らすな!」
結局しばらくの間修兵さまは離してくれなかった。やっと解放されても恥ずかしさの余りに十分くらいベッドから下りれず、ぼけっとしていたら修兵さまに横抱きにされて下ろされた。うん、鼻血出そうだ。
「なあ、葉鈴、異世界ってどういうことだ?」
「修兵……のいた世界と、此処は違う。これ、週刊少年ジャンプっていう雑誌で、修兵のいた世界は私たちがいるこの世界では、BLEACHっていう漫画の中の世界なの」
「何かよくわかんねえけど」
「わからなくても生きてはいけるから大丈夫」
ジャンプを開いて説明をするものの、わからなくても当然だよなとも思う。私だって逆の立場なら訳がわからなくなって考えるのを放棄するだろうね。それより、と修兵さまが口を開くから私は彼を見上げた。
「葉鈴の家、だろ?」
「うん」
「いてもいいか……?」
「こんな家でよければいつまででも。一人暮らしだから、楽しくなるね」
遠慮がちに訊いてくる修兵さまにおっけいを出すと、さんきゅって笑ってくれた!やばいかっこいい!本物は違うねとか一人考えて危うくニヤけるところだった。抱きつきたい衝動を必死で抑えながら朝ご飯兼お昼ご飯を作った。