かの源氏物語の桐壺の更衣のような状況に、私はいた。桐壷の更衣とは、それほど高貴な身分ではなかったものの、帝から大層寵愛を受けていた。それと共に、他の女御・更衣からは妬まれ恨まれ、病気がちになって死んでしまった、光源氏の母である。



「あら、貴女、こんなところへどのようなご用件で?」

「喉が渇いたので、少しばかり水をと思いまして」

「そう。少しといわず、お飲みくださいな」

「……っ!」



水を飲みに井戸へ行くと、私よりも身分の高い女御に水をかけられた。周りにいた何人もの女御や更衣がくすくすと口元を袖口で覆って笑う。……気に食わない。あんな帝など、私は。



「水など、帝に飲ませていただいたらどうです?」

「私は帝の相手などしたくありません」

「聞き捨てなりませんね。愛されているから、そのようなことが言えるのです!」

「愛してくれと言った覚えはありません。帝が勝手に、」



また水をかけられた。さっきよりも大量の水だ。一人だったのが三人になっているから、水の量が増えても当たり前か。キッと睨むと更に水をかけられ着物が重い。私は水を飲むのを諦めて踵を返した。笑い声だけが聞こえる。



「真白」

「来ないでいただけますか。今は貴方の顔を見たくありません」

「そんなことは知らねえ。それより真白、今度は水をかけられたんだって?」

「貴方の所為です。貴方が私などを相手にするから」



早くお着替えをとうるさい側女たちに下がれと言って部屋から離れさせて一人でいた。だから着替えていない。一人になりたかったのに帝――もとい修兵が来たから何と運の悪いことか。修兵は背を向ける私に歩み寄ってきて無理矢理に己の方を向かせた。



「そうは言われても、お前以上に良い女はいねえし」

「毎晩毎晩違う方のところへ行かれているくせに、何をおっしゃいますか」

「真白が良い女だと証明する為だ」

「余計なことをなさるお方ですね。そんなことをしては他の女御や更衣たちの反感を買うだけです。怒りの矛先はこの私。それをわかっておいでなのですか?」



だからこそやってんだ、と言われて腹が立ったから思わず頬を平手打ちしてしまった。女御たちに知られたらどうなることか……。想像するだけでぞっとした。当の修兵はというと、私のびしょ濡れの着物を着々と脱がせていた。



「何を、!」

「何って、ヤるに決まってんだろ?」

「お断り致します!出て行ってください!」

「嫌だ」



抵抗も虚しく着物は全て剥ぎ取られ私の手の届かないところへやられてしまった。このような明るい時にその行為をしたことがなく、一糸纏わぬ姿を見られていることに羞恥を覚え、手で隠す。が、


「隠すなよ、真白」

「嫌です隠します」

「真白」

「嫌です!」


頭上で両手首を左手で拘束され、顔を逸らす。それも修兵の右手によって修兵の方を向かされたけれど。抵抗し続けるんだと今度は視線を逸らすと、口づけが落ちてきた。いきなりの深い口づけに嫌でも甘ったるい声が出てしまう。満足げに笑う修兵を空いている足で蹴ってやったが、何事もなかったかのように口づけを続けられ胸を揉まれた。



結局、真昼間から嫌なことをさせられた。

だけど私が修兵を好きだということは、認めたくないけれど事実だ。



(2012.02.07)




遅すぎですが修兵お誕生日記念でした!



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