さらに時は経ち、その間に私と黒崎は随分と仲が良くなった。久しぶりに私は笑うことが出来たし、やっぱり黒崎といるととても落ち着いた。常に温もりに包まれているような……そんな気分になれた。そしてとある日。


「行くのか?」

「ああ。やらなければならないから」

「わかった。俺も行く。怜香は俺が護るから」

「……ありがとう」


二人で瀞霊廷へと足を運んだ。もちろん攻撃する為だ。一度くらい盛大に暴れてやろうと考えていたけれど、それはもう少し先にしよう。まずは黒崎と二人でいることに対しての反応を窺わなければ。待っていろ……必ず、復讐をしてみせる。


「やけに静かだな」

「行かなかったこの数日の間に体勢を整えたんだろう」

「気ぃ引き締めて行かねえとな」

「ああ。だが、黒崎は攻撃はしなくていい、防御に徹してくれ」


わかったと返事を聞くと、私は黒崎の手をぎゅっと握って瀞霊廷内へ突っ込んだ。その先で私たちを待ち受けていたのは沢山の死神だちだった。一旦軌道を変えてしばらく進み、誰もいない屋根へとそっと降り立った。


「黒崎?」

「無理だけはするなよ」

「わかってる。黒崎が悲しむのは見たくないから」

「怜香……」


不意に抱きしめられて、耳元で囁かれる。少しだけ抱き合ってから敵の方へ向き直り、闇風を刀へ戻した。一気に二人分の強い霊圧が開放される。向こうの方で下っ端の死神たちが霊圧にあてられて何人も倒れるのを見た。


「夕深!一護、お前……!」

「こんにちは、班目三席。黒崎は私についたんだ」

「一護!こいつは尸魂界の敵だぞ!何考えてんだ!」

「悪いな。俺は知っちまったんだ、怜香の思いを」


ありがとう、と心の中で呟いて刀を抜いた。この場にいる席官たちはみんな既に始解している。この人数か……闇風だけだときついな。籟枷の出番だな、頼んだぞと声をかけると、不機嫌そうに返事がきた。


「吹き荒れろ、闇風。大地に轟け、籟枷」

「……っ!」


辺りは風に包まれ小さな竜巻が起きる。私と黒崎以外は多少なりともダメージを喰らったはずだ。風に姿が紛れている間に高等破道の詠唱をする。次第に風はおさまり、死神の姿が見えてくる――こちらへ向かってくる集団に向かって籟枷の先を向け、放った。


「凄えな、それ」

「父のものなんだ。まだ上手く扱えない」

「それでもそんだけ正確に鬼道ぶっ放せれば十分だろ」

「……ありがとう」


黒崎を見て、笑いかける。そのまま敵陣に突っ込んで行った。右手に闇風を、左手に籟枷を握って使い分けながら戦う。黒崎は私の言った通り防御に徹していて、時々私の背中を護ってくれた。しばらく戦ったのち、闇風に隠れて瀞霊廷を出た。きっと今頃死神たちは必死で私たちを探しているはずだ。


「もうよかったのか?」

「ああ。反応は窺えた」

「そうか」

「近いうちに本気で攻める」


洞窟へ戻る途中での会話だった。死神たちは少し動揺しながらも黒崎に対しても手加減など一切しなかった。おそらく次に行くときは黒崎への対策も考えてくるだろう。私は全力で挑むしかない。そろそろ……復讐を始めよう。



(2018.06.04)


- 8 -



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -