それから日は過ぎたけれど、黒崎は何も聞いてはこなかったしその話題に触れようとさえしなかった。何だかそれをもどかしいと感じている私がいて、必死でそれを否定した。黒崎はたかが私の為に尸魂界の仲間と戦ってくれている。いつしか私はそんな黒崎の姿勢を見て、彼を信じていた。


「怜香」

「何?」

「来いよ」

「……は?」


突然の言葉に訳がわからない。来いって、どこに?私は既に黒崎の隣(と言っても枝だけれど)にいる。そんなことを考えていたら黒崎が私の前にやってきていて、私を抱えてから自分のいた枝に戻る。更に頭を混乱させていると、黒崎の足の上に下ろされて抱きしめられた。


「黒崎……?」

「何となく、怜香が泣きそうだったから」

「別に私は泣きたくなんて、」

「今まで泣いてこなかったんだろ?」


ポンポンと頭を撫でられてぎゅっと腕の力が強くなる。何故か不意に涙がこみ上げてきて止まらなくなった。闇風で隠しているというのにも関わらず、私は声をひたすら押し殺して泣いた。余りに父さんが私にしてくれることと似ていたからかもしれない。


「怜香には俺がいるから」

「うん」

「泣きてえ時は泣けばいい。俺が全部受け止めてやる」

「……ありがとう」


素直になれた。いつもならうんなんて返事はしないのに。私が久しぶりに一人の女になれた瞬間だったかもしれない。黒崎の死覇装をきゅっと握って、黒崎の広い胸に額を押し付けて、黒崎の温もりを全身に感じながら涙がおさまるのを静かに待っていた。


「例え怜香がどこにいっちまっても、俺はここで待ってる」

「……ここじゃない」

「ここじゃ、ない?」

「私の本当の拠点はここじゃない」


私がいつもいた場所へと黒崎を連れて行った。そこは洞窟で、基本的に私が生活をしていた場所だ。瀞霊廷にいた頃に使っていたベッドやタンス、食器や調理器具など最低限の生活が出来るようになっている。


「ここが……?」

「ああ。私は瀞霊廷を抜けてからはいつもここで生活していた」

「そうか。なら、ここで待ってるよ。怜香が帰ってくるまで、ずっと」

「……ああ」


闇風を実体化させて私たちは眠りについた。いいと断ったのにも関わらず、黒崎は私を抱きしめていてくれた。いつぶりになるかもわからないくらいに長い長い年月の末に感じた安らぎだった。父さんとはまた違う温もりだけど……本当に心から安心できる。



(2018.06.04)


- 7 -



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -