あれから二週間が経った。その間にも少なくとも五回は黒崎と刃を交えた。黒崎から伝わってくるのは“知りたい”という思い。何故私が尸魂界と戦っているのか……それが疑問なのだ。彼は私と戦う意味を見出せずに戸惑っている。現にそれを彼は私に言ってきた。
「また来たのか、怜香」
「目的を果たす為の準備だ」
「だから、その目的って何なんだよ」
「……黒崎が私につけば教えてやる」
今日は闇風に隠れてきたから黒崎にしか見えていない。周りに隊士もいないしましてや隊長副隊長もいない。完全に二人きりだ。しかし彼に私ははっきりとは見えていない。考える素振りを見せた黒崎だったが、やがてその大刀と構えた。
「つく気はないようだな」
「戦って、決める」
「戦って何がわかる?」
「刀を交えれば相手の気持ちがわかるんだ」
そんな馬鹿なと思いながらも、闇風を発動させたまま刀を抜いた。戦えないことはないが些か無理がある。だが今は何となく誰にも見つかりたくなかった。闇風には傷ついて欲しくない――その思いが僅かに勝り、黒崎の攻撃を数回かわしたのちに元に戻した。
「刀を交えるだけで私の気持ちがわかるなら、当ててみろ」
「ああ……言われなくても当ててやるさ」
「一体その自信はどこから来るんだろうな」
「俺は、俺と斬月のおっさんを信じてる」
誰も来ないまま金属音だけが響く。互いに息は上がることなく平然と時間だけが経っていった。しばらく戦いが続き、一旦距離を置いて一息ついた頃黒崎が刀を下ろした。自然と目が開く。
「悲しみ、怒り、憎しみ」
「何だ?」
「怜香の中でその三つが渦巻いてるんだ。何かがあって尸魂界、もしくは死神に強い怒りと憎しみを抱いていて……それと同じくらい悲しんでる。違うか?」
「……正解」
まさか本当に当てるとは思ってもみなかった。どうせわかりはしないと、決めつけていた。私は黒崎と一度もそんな話をしたことがない……故に確かに彼が私の刀から感じ取ったのだと素直に受け入れられた。
「悪いなみんな……俺は怜香と行く」
「何を言っている?」
「いいだろ?」
「本気か?私についても良いことなどありはしない。ましてや死神代行を剥奪されるかもしれないんだぞ」
そんなもん知るか、黒崎は言い放って私の手から刀を抜き鞘にしまった。少し身構えるが不意打ちをするつもりなど毛頭ないらしい。警戒する私を見て疑問符が頭に浮かんでいる。
「見つかる前に行こうぜ」
「本当にいいんだな?」
「ああ、構わねえ」
「……隠せ、闇風」
始解をして私と黒崎を覆い隠す。黒崎の腕を掴んで瞬歩で瀞霊廷を出た。いつもいるところとは別の場所へ行き歩みを止めた。辺りを見渡す黒崎を無視して木の上へ飛び上がる。枝に座って幹にもたれると黒崎も同じようにした。
(2012.10.07)
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