別の日、また私は瀞霊廷へと乗り込んだ。今度は闇風で身を潜めて誰にも気付かれないように、奇襲をしようと考えた。誰を狙うか考えながら歩いていると、数回しか見たことのない人物が歩いているのを発見した。
「確か……そう、黒崎一護」
「、お前」
「っ!?」
「それ、お前の斬魄刀か?」
あり得ないと思うものの、黒崎一護は私に向かって話しかけてくる。辺りには誰もいないし彼は通信機のようなものさえ持っていない。明らかに私を捉え、私の目を見て、問いかけているのだ。
「見える、のか?」
「この距離でもぼんやり……だけど。霊圧も何となく感じる」
「……隠れていても仕方ないか」
「うわっ!?」
一旦闇風を刀に戻す。同時に羽が実体化して私の背中へ消えていった。鞘に収まっている刀の柄を握っていつでも抜けるようにする。だけど黒崎は刀を構えようともせず、私をまじまじと見てくる。
「お前、死神代行だろう」
「ああ……。お前は、」
「一護!そいつが夕深怜香だ!」
「やっぱりそうか」
黒崎の後ろから阿散井が走ってくる。私は黒崎と距離を置き斬魄刀を構えた。彼は阿散井の言葉でやっと刀を取り出す。聞いていた通りの大刀に、霊圧も隊長格くらい……もしかするとそれ以上かもしれない。
「なあ、怜香」
「気安く名前を呼ぶな」
「何で怜香はこんなことするんだ?」
「……私にも色々ある」
言っても聞く耳を持たない奴だろうと瞬時に判断した。気がつけば阿散井も抜刀して始解までしていた。流石の私でもこの二人を相手するのに始解もなしじゃ五分にはできても勝てる気はしない。
「ま、流石に初めっから話してはくれねえよな。……いくぜ」
「吹き荒れろ、闇風」
「なっ!?」
「大怪我だけはしないように、手加減してくれ」
始解したときの風に紛れて小さく呟くとわかったと闇風から返事がくる。とりあえず三発、風刃を飛ばす。二人がそれを受け流している間に更に距離を取った。
「逃げる気かよ!」
「誰が逃げるか。私は遠距離型だ」
「……俺は近距離型だ」
「ッ……!」
阿散井の叫びに答えている間に黒崎が間合いへ飛び込んでくる。間一髪のところで受け止めて右へ流した。が、黒崎は私に離れる隙を与えないように次々と打ち込んでくる。仕方ないかと諦めて全身を近距離モードへと変換させた。
「破道の三十一、赤火砲」
「お前……ッ」
「何だ?」
「遠距離型じゃねえのかよ!」
立場が逆転する。今度は私が黒崎に反撃の隙を与えぬように間髪入れずに闇風を振り回す。時々鬼道を混ぜながら行動を読まれないように攻撃していく。その甲斐あってか黒崎は反撃する余裕がなさそうだ。
「基本形は遠距離だが」
「だが、何だよ?」
「誰も近距離が苦手だとは言っていない」
「……まあ、そうだけど」
時々会話をはさみながら戦っていた。何故か阿散井は始解をしたにも関わらず傍らに佇み戦闘を見ているだけだった。黒崎が危機に陥ったら加勢するつもりだったのだろうか。適当なところで私は見切りをつけて二人に縛道を放って瀞霊廷を出た。
(2012.08.26)
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