黒崎を意識しすぎてうまく眠れず、早朝陽が出る頃に目が覚めてしまった。黒崎を起こさないよう洞窟に出入り口付近まで行き朝日を浴びる。胸に両手を当てて、昨日のことを改めて考えてみた。


「やっぱり、私、黒崎のこと」

「俺がどうしたんだ?」


黒崎の声が聞こえたと思った瞬間、後ろから抱きしめられる。心底びっくりして肩が跳ねたけれど、黒崎はそんなことお構いなしだ。驚いたのも相まって心臓が早くなり、頬は熱を持つ。だけど言おう、そう決意してすぐそこにある黒崎の逞しい腕をそっと握った。


「私、も、黒崎が好き」

「怜香……!」


ばっと黒崎が離れたかと思うと、すぐに今度は前からぎゅっとされる。戸惑いながら背中に手を回すけれど、何となくいつものようにできていないんじゃないかと思ってしまった。それも束の間、意識し出したせいか余りにも恥ずかしくなって無理矢理黒崎から離れて、ご飯食べるぞと洞窟の中へ逃げていった。……まあ、逃げられないのだけれど。
そうして朝食を済ませ、今日も今日とて虚を探しに流魂街へと足を運んだ。


「今日こそ見つかるといいな」

「そうだな」


そう言って、少し歩くと黒崎が何かに気づいたようだった。あいつ何かが変だ、とぽつり呟いてじっと見つめる先には、一人の女性の姿。何がどう変なのかはわからないけれど、しばらくその女性を観察してみることにした。お昼頃になると女性は数人を連れて人気のない森へと移動した。その瞬間。


「……!?あいつ……!!」

「虚か!?」

「間違いない……父を殺した奴だ」

「……行こう、怜香」


女性は虚の姿になったかと思うと、一瞬で連れてきた数人を殺し、食し、またすぐに女性へと戻った。私と黒崎は闇風に隠れて虚を挟み撃ちにし、虚は呆気なく散った。厄介なのはその能力だけで虚自体はさして強くなかったらしい。黒崎と二人だったから簡単に倒せた、というのが本当のところだろうけれど。


「……怜香、大丈夫か?」

「ああ……大丈夫だ、すまない」

「無理するなよ」


ぽん、と頭に手が置かれる。弾かれたように私は黒崎に飛びついて泣いた。無力だった自分が本当に悔しかった。なぜこんな虚に私たちの運命は狂わされなければならなかったのか。少しして私は顔を上げ、両手で一度だけ涙を拭った。そんな私を見て黒崎は言葉を紡ぐ。きっとそれは彼の本音で。


「これだけじゃ、ダメなのか?本当の仇はさっきの虚なんだろ?」

「そう。だけど、この虚のことを突き止められず、父を処刑した瀞霊廷も同じくらい許せないんだ」

「……そうか。怜香がそう言うなら、俺はついて行くぜ」

「ありがとう、黒崎」


また溢れそうになる涙をぐっと堪えて、空を見上げた。復讐には向かない、雲ひとつない清々しい青空だった。それでも私は瀞霊廷へも復讐をと改めて自分の気持ちを固めて、歩き出した。その日はもう洞窟へ戻り、二日後に瀞霊廷を攻める段取りを話し合ってから眠りについた。



(2018.06.26)


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