10分ほど休憩して探索を再開したが、その日は結局何の手がかりも掴めなかった。次の日もその次の日も収穫はなく、ただただ時間が過ぎていくだけの毎日だった。そんな日々の中、私はやっと黒崎に父のことを打ち明けようと改めて決意した。今日も虚は見つからず、無言で洞窟まで帰った。


「……黒崎。話が、ある」

「怜香?」

「家族のこと……話しておきたい。聞いてくれるか?」

「ああ」


そうして、私は話しだした。ぽつりぽつりと過去を語る私の隣で、黒崎はぎゅっと手を握っていつものようにただ静かに話を聞いてくれた。黒崎といると安心する。本当に、温もりに包まれているようで。最初は父と同じだと思っていたけれど、そこに父とは違う感情があるような気もしている。過去を話し終わると、ひと呼吸置いて、続けた。


「だから、復讐をしようとしているんだ」

「……怜香、」


いつになく強い力で、黒崎に抱きしめられた。私は父のことが悔しくて悲しくて、しがみつくように黒崎の背中に手を回し、肩に顔を埋めた。なんて温かい人なんだろう。私たちはしばらくの間そうして抱き合っていた。もう寝よう、と言って黒崎が私を離したのは、一体どのくらい時間が経ってからだろうか。頷いてベッドへ行くと、なぜか黒崎も同じベッドに入ろうとする。


「く、黒崎……?」

「怜香、あのさ」

「どう……した、」

「こんな時に言うのは卑怯かもしれねえけど、俺、怜香のことが好きだ」


真っ直ぐ、真剣に見つめられて、息が詰まりそうだった。どくどくと心臓が早鐘を打ち、黒崎がら目が離せないまま沈黙が流れる。


「あー……わりぃ、そんな顔させるつもりはなかったんだ」


眉を下げてそう言った黒崎は、もう一度私をぎゅっと抱きしめる。黒崎のことを意識していなかったわけではない。だけど黒崎のことを好きかどうかとか、そういう風には考えたことはなかった。


「わたし、」

「俺、本当に怜香が好きなんだ。怜香のためなら死神の力を失くしたって、死んだって構わねえと思ってる。それだけは、知っててほしくて」


体が離れて、今度は頬に手が伸びてくる。やっぱり黒崎からは目が離せなくて。そうして見ていると、ふいに顔が近づいてきた。けれど唇が触れるか触れないか、寸でのところで止まり、唇の代わりにコツンと額どうしが触れた。その瞬間、なぜか黒崎に抱きしめられたり、黒崎の胸で泣いたり、手を握ったりした記憶が思い起こされて、急に顔に熱が集まる。


「怜香、耳まで真っ赤」

「く、黒崎が……」

「俺が?」

「〜〜〜っ、何でもない!」


額が離れて見えた黒崎はいつもより数段かっこよく感じて、ああ私は黒崎のことが好きなんだと自覚してしまった。いつか離れ離れになるかもしれないのに。期待させてはいけないと思いながら、如何せん恋愛経験の乏しい私には、隠し通すことは難しそうだった。


「早く寝るぞ!」

「へーへー」


おやすみと半ば強引に布団に潜り、黒崎を見ないようにした。心臓がうるさくて仕方ない。黒崎は何事もなかったかのように隣のベッドへ入ったようだった。



(2018.06.12)


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