短編 | ナノ







兵長はわたしの憧れだ。

強くて格好良くて
彼に重力は効いていないんじゃないか
ってぐらい身軽に空を翔る。
壁外調査に慣れていない頃
巨人に足を掴まれ
絶体絶命の危機に陥った時
兵長が巨人のうなじを
あの超速回転切りで削いで
わたしを救ってくれた。
あのときからこの人についていきたい
と思うようになった。



「え…あのもう一回お願いします」
私の耳は都合のいいように
解釈をしてしまったかもしれない
「ペトラ・ラル、オルオ・ボザド、
エルド・ジン、グンタ・シュルツ、
以上四名は本日よりリヴァイ班配属とする」
ほっぺを引っ張ったが
なんと……痛い。
夢ではないらしい。
「ドッキリ?」
驚きすぎて
「なわけないだろ」



兵長に初めてコーヒーを煎れたとき
悪くないといわれて
美味しく無いのかと思って悩んだ。
だが、兵長と暮らしていくうちに
兵長の悪くないは相当な褒め言葉だとわかり
それをいわれた時に
毎回心の中でガッツポーズを
するようになった。

これからもずっと一緒に居たかった
共に戦いたかった
なのに
意識は遠のいていく
まだ伝えていないことはたくさんある
何より、この胸にしまってきた気持ちも伝えていない。

「兵長…?」

そこに兵長がいるような気がした
そんな訳はないのに

「ずっと好きでした…」



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ペトラ・ラルという部下が
俺の班に配属されることになった
他の奴によると
彼女は俺を慕っていることで有名らしい
本人は気づいていないらしいが

配属の意図は
"いつ死んでもおかしくない調査兵団の団員が
思い残すことが少ないように"
だった。

どうして死を前提にするんだ。
とは言えない。
この手で救えなかった部下は
掌から零れ落ちてしまった部下は
たくさんいた。

そう言われて配属されたら
意識しない奴はいないんじゃないか
彼女の淹れてくれるコーヒーからも
好意が滲み出ているような気がした

男性に混じって訓練していても
弱音一つ吐かない
そういうところに惹かれていったのかもしれない


なのに、
リヴァイ班はエレンを除き
全滅。

まだ何も言っちゃいない
伝えようと思っていた言葉も。
彼女に目を向けると
息絶えたはずの彼女が
「ずっと好きでした…」
と言った気がした。




「兵長!それは…」

「いいから下ろせ!」

俺は二度お前を殺した
遺体を捨てたりしたくなかった
でも、でも俺は"兵長"なんだ。
俺がこの判断しねぇと、
他のたくさんの調査兵が
巨人に食われちまうんだ。

それに
お前の気持ちは "自由の翼"は
俺の胸ポケットにいるんだ。

だから、

だから…



俺は泣いている奴には弱いらしい
だから お前の"自由の翼"を
偽って渡しちまった。
俺にはお前がいたという痕跡が
何も残らなかった
でも
どんな顔で笑っていたか
どんな声で「リヴァイ兵長」と呼んでいたか
この目に この耳に残っている
それだけで 十分だ
俺もエルヴィンのように一生結婚しないだろう。
一生お前を想って生きていくだろう。
その声がその笑顔が
俺の中に残っている限り。

「ペトラ、

愛してる」





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654を踏まれためーこさんへ
「リヴァイ→←←ペトラが、
実はリヴァイ→→→←←ペトラ」
というリクエストをいただきました。
幸せにするはずが
悲恋になってしまいました…
でも両片思いは伝わるはず…!
ARIAの兵長の方の連載は
読んでないので
多分ものすごく捏造してます…
そしてアニメの台詞もうろ覚え…
ほんとすいません!







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