¨ねぇ¨と呼び掛ければギシッとスプリング音を響かせ俺の方に振り向く。情事後の色気を隠そうともせずに。
「四木さんはどうして俺と寝るんです?」
「そりゃ、貴方が誘ってくるからでしょ?」
そうかもしれないけど、俺が求めてる答えとは違うことに苛立つ。きっと、そんなの建前でどうせ組のためなんだろう。そんなことにも更に苛立つ。
「逆に聞きますが、何故私と寝るんですか?」
ニヤッていう効果音がぴったりすぎる四木さんの顔。
「……わかってるくせに聞くんですか?」
「本人の口から聞きたいもんでね」
「…っ、なんかそう言われると答えたくなくなりますね」
人って不思議ですよね、だからこそ俺は人間が好きだ!なんて呟けば笑われた。
「折原さんは、人間が好きだから私も好きなんですか?」
その他大勢と一緒とは悲しいですね、なんて言っているがそんなこと地球が滅んだとしても思わないだろうに。
「確かに貴方が人間だから好きなのかもしれませんね。でも、貴方はそこいらの人間以上に興味があるんですよ。だからですかね?」
「じゃあ、あの平和島とか言う奴は?」
「静ちゃん?あんなの化物であって俺にとって憎悪の対象でしかないですよ」
なんでここで静ちゃんの話題がでるのか。俺は不思議で仕方ない。嫉妬でもしているのか、なんて思ったけど四木さんがそんな感情持ち合わせているなんて考えられない。
「そうですか。つい、仲がいいんで勘繰りましたよ」
仲が良い?あの殺し合いを見てどこが仲良く見えるんだ?それとも俺と静ちゃんの殺し合いは四木さんから見れば馴れ合いにしか見えないってことなのか?それとも本当に……。
「なに、嫉妬ですか?」
からかい気味に聞けばこんな答えが返ってきた。
「そうと呼ぶかもしれませんね」
思わず四木さんをガン見してしまった。そんな俺にお構い無しと唇を寄せてきた。¨そんなに驚かなくてもいいじゃないですか¨なんて微笑んでるけど驚きすぎて言葉も出ない。
「私だって感情があるんですよ?」
「……四木さんでも嫉妬なんてするんですか?」
「人間ですからね」
微笑まれれば、そうかと頷くしかない。こんな感情を露にしている四木さんなんて貴重だな、と思うと同時に嫉妬してくれたことと俺にしか見せない表情だと思うと感情が高ぶる。普段はそんなとこ絶対見せないのに。
「そんなに嬉しいですか?私が嫉妬するのは」
「…なんでです?」
「顔がとても嬉しそうですよ」
無意識にそんな顔をしていた自分が悔しい。四木さんの前じゃいつものポーカーフェイスが出来なくなる。
「そうですよ。貴方はなかなか感情を露にしてくれないですし」
そんなこと言えば、ニヤッと笑われた。四木さんはたぶん普通に笑ったつもりなのだろうがそう見えてしまう。
「自分では貴方の前では感情を出しているつもりなんですけどね」
¨じゃあ、もっと愛情表現をしてさしあげよう¨と言われ、そのままベッドに押し倒されキスをされた。
(これなら私の愛情もわかるでしょ?)
(ええ、嫌ってほどに)