もっと早く気づけば







※背後注意





「んぅやぁ…シズちゃ、やめっ」


今、俺はずっとずっと想い続けていた臨也を組み敷いている。やめてと涙ぐみながらいや、もう散々泣いている臨也に言われても俺の理性が壊れそうになるだけだ。さっきから、結合部から血が滴っているが気にせず容赦なく下から突き上げれば、臨也は喘ぎとも言えない悲鳴を上げる。痛いなんてものじゃないだろう、嫌いな男からこんな辱しめにあうなんて。……でも、俺にはこんな方法しか思い付かなかったんだ。

「なに言ってるんだよ、臨也君よお?さっきから、きゅうきゅうに締め付けてきてよ?」

「ちがっ、も、やめぇ、てっ冗談な、んでしょっ」

今なら許すからなんて言ってるけど、冗談なんかじゃないし止めてやるつもりだってない。それを身体で現すかのように俺は更に激しく腰を揺すった。合わせるように臨也の中も俺のを締め付けてくる。その締め付けに耐えれず俺は臨也の中で果てた。でも、臨也のモノは萎えたままだった。

イッた後の脱力感からハアハアと肩で息をし、臨也を見れば両腕で顔を隠している。きっと泣いているんだろうな、と思う。俺は臨也に出した精液を掻き出す。時折、ビクッと反応はするが顔は隠したままだ。掻き出し終わり、臨也にトランクスとズボンを穿かせる。その間臨也はされるがままだったし、お互い言葉を発することはなかった。



「悪かったな」

そう言葉に出せば臨也は両腕を顔から外し泣き晴らした顔を俺に向けた。

「そんな顔するなよ。もう手前の前には現れねぇからよ、安心しろ」

ぐしゃと頭を撫でれば体を震わされた。仕方ないよな、と苦笑し俺は臨也から離れていった。
たぶん、いや二度と臨也と顔を合わせることはないだろう。自分でしたことなんだから自業自得だが、後悔はしていない。臨也の心の中には俺という存在が嫌でも刻み付けられただろう。それでいいんだ、臨也の心の中に俺という存在が居るだけで嬉しくなる。自分でも可笑しいと思うけどいいんだ。そのまま、臨也から離れていけば後ろから小さく声が聞こえる。

「……ないでよ」

振り向けば臨也が泣きそうな顔を必死に堪えて俺の方を真っ直ぐ見ている。

「……行かないでよ!!俺の気持ちは無視なの?もう会わないって何?何勝手に自分で結論付けちゃってるの?」

早口で捲し立てられるように告げられた言葉に俺の頭は着いていけないようだ。

「臨、也?」

「俺、今すごく傷付いてるんだからね?」

「悪い、勝手にヤって。体大丈夫か?」

「体は別にいいんだよ。俺は心が傷付いてんの!……静ちゃんの気持ちがわからないままヤられる俺の気持ち分かる!?」

そりゃ、嫌いな相手からヤられてるんだから最悪なんだろう。

「……」

「俺を犯すってくらい嫌いなんだと最初は思ったよ。でも、後始末してくれるし最中は何処か優しげだし俺と会わないって言ったときの顔は切なさそうだし。」

そんな顔していたのか?後始末はそりゃ好きな奴だし勝手にヤったのは此方なんだから当たり前だろ。

「……俺、期待してもいいの?」

「なにがだ?」

「鈍感」

「悪ぃ、言葉にしてもらわないとわからねぇんだよバカだから」

「うん、知ってる」

臨也はいつも通りの嘲笑いを見せた。ムカつくがいつもの臨也だ。それに何処かホッとするがまた真剣な顔つきに変わる。

「……静ちゃんは俺のこと好きなの?」

「っ!…あぁ、そうだ。俺は手前が、臨也が好きだ」

真っ直ぐ目を見て言えば、だんだん臨也の目から涙が溢れてくる。

「悪ぃ、気持ち悪いよな嫌いな奴からそんなこと言われたって」

¨ちがっ¨と臨也は首を左右に振った。

「違うの。俺も静ちゃんが好きだから嬉しくて」

「……え?は?」

今、臨也の口から信じられない言葉が聞こえた気がする。臨也が俺のことを好き……?

「はあああああ!?」

「驚きすぎじゃない?」

「だってそんな素振り見せなかったじゃねぇか」

「そんなの静ちゃんだって一緒でしょ?さっきまで嫌われてるって思ってたもん、俺」

ああ、そっかと言われて納得した。俺たちはお互いに嫌われてると思ってたのか。¨もっと早くからわかってれば行動したのにな¨なんて臨也が呟いたが全くその通りだと思う。それに臨也を無理矢理ヤらなくたって済んだろうに。
臨也がいきなりこっちを向いた。なにかと思えばこう告げてきた。

「静ちゃん、俺と付き合ってくれる?」

思わず呆気にとられた。此れは俺が言うべき台詞なんじゃないか?

「ああ、もちろん。離したりなんかしねぇから覚悟しろよ?」

¨うん¨なんて笑う臨也は、今まで見てきた中で一番かわいいんじゃないかって顔をしている。そんな臨也を俺の腕へ引き寄せてそのまま唇を重ねた。この幸せを手離さないよう臨也を傷つけないよう、そう胸に誓った。



(ねぇ静ちゃん、今最高に幸せなんだ)
(奇遇だな、俺もだ)