臨也が池袋から姿を消して1ヶ月がたった。


静雄は顔には見せないがかなりイライラしている様子だった。携帯にも連絡つかないみたいだ。最初の1週間は静雄も一生懸命探したみたいだが、相手は臨也だ。そう簡単に見つかるわけもなく今に至る。

と言っても僕は知ってる訳だ……てか、僕ん家に居たりする。1ヶ月ほど前、切羽詰まった顔で訪ねてきた。¨匿ってほしい、静ちゃんにはバレたくない¨と告げてきた。それ以上臨也はなにも言わずにいた。中学からの友達だし、そんな切羽詰まった臨也を見るのなんて初めてだった。そんなこんなで静雄にバレないように臨也を家に置いてる。静雄が家に訪ねたりしに来た日はバレないか心配で胃が痛くなったりもした。
それも、そろそろ限界かもしれない。臨也は日に日に痩せていくし、静雄はイライラして池袋中の物を壊していくし。池袋中の物が壊されることに何の迷惑を僕は持たないけど、業者が可哀想だ。そんなことよりも臨也のことが心配だ。僕の家に来てから、食欲がなくて全然食べなった。元々細く白い体が益々貧弱になっていった。睡眠もなかなか摂れてないみたいで、睡眠薬を使ってようやく寝れる状態だ。医者として、友人として臨也をこのままの状態にしとくのは悪い方向に進むだけだと思う。だから、臨也と静雄を会わせてなんとかしなきゃ。まずは臨也に静雄を避けている理由を聞かなきゃならない。理由によっては静雄に会わすことを止めなきゃならないし。

僕は臨也が居る部屋へと向かった。扉をノックしてから

「臨也、ちょっといいかい?話があるんだけど」

「なんだい新羅?」

そう言いながら臨也は扉を開けた。

「ちょっと大事な話だからリビングに来てほしいんだけど」

「んー、わかった。ちょっと待ってて、行くから」

臨也はそう言い、部屋の中に戻った。僕は先にリビングへ戻りソファに腰掛けた。

「新羅、なんのよう?」

臨也はリビングに入り、僕の向かいのソファに座った。

「率直に言うけど、静雄と何があったの?」

「……っ!」

臨也はびっくりした顔のあと俯いた。

「言わないなら君をここに匿って置くこともできないし、静雄に言うから」

臨也は俯いていた顔をあげた。その顔には焦りが見えていた。

「新羅がそんな手に出るとは思わなかったよ。ここを追い出されても行く場所はあるけど静ちゃんに見つかりそうだからな」

「それなら、理由を話してくれるの?」

「まぁ、仕方ないか。……静ちゃんが他の女とキスしてた。別れを告げられるくらいなら自分から離れた方がいいと思って」

臨也は何事もなかったかのようにポツポツと吐き出した。相変わらず静雄のことになると臆病になるな。

「それ、静雄に聞いたの?」

「聞くわけないじゃん……聞けるわけ……」

「そっか。理由は話してくれたからまだまだここに居ていいからね」

「ありがとう。じゃあ、俺は戻るから」

「うん」

臨也は話したせいなのか少し疲れた雰囲気で部屋へと帰っていった。
しかし臨也から聞いた話からすれば臨也が勘違いしている可能性が高い。てか、100%勘違いな気がする。卒業のときに、臨也から静雄に告白したと聞いたが僕の目から見れば入学した当初から二人は両想いだと思う。むしろ静雄は僕が中学の頃から話していた臨也に惹かれていたと思う。なのに、臨也は静雄が仕方なく付き合っていると思っているみたいだ。¨俺から告白したし、仕方なく付き合ってやるよ¨みたいに勘違いしてるんだろうな。大切にしてなきゃ静雄も捜したりしないだろうに。そこらへん鈍感だよな、臨也って。
とりあえず、臨也には悪いけど静雄をここに呼んで話し合ってもらうしかない。……話し合いになるのか不安だけど。