※門田京介の憂鬱の続き?
※静雄視点
帰り道、ふと教室に忘れ物をしたなと思い学校に戻った。たいしたものじゃないし、戻らなくてもよかったのに何故か引き寄せられるように教室へと向かう。このとき戻らなきゃよかったと心の底から思った。
ようやく教室の前に到着し、扉に手を掛けようとしたら中から声がした。扉を少し開け中を覗いてみればそこには臨也と門田の姿が。この二人はなにかと仲良くてなんかムカつく。そのまま二人を見ていたら臨也の方から門田に近付き、……キスをしていた。それを見た俺は頭が真っ白になり、その場から逃げ出した。なんで逃げ出したのかわからない、とりあえずあの二人を見ていたくなかったんだ。
(なんだこれ、俺臨也に振られんのか?)
いつになく俺は弱気でいた。さっきだって中に入って二人を離すこともできたはずなのにそんな勇気もなく。最近思うんだ、臨也は俺なんかじゃなくてもっと他にいい人がいるんじゃないかって。俺は臨也を傷付けることしかできねぇ、それに男だし。……その反面、誰にも臨也を渡したくない気持ちもある。誰にも見せずに監禁してぇよ。まぁ、臨也がそんな簡単に監禁されるとは思えないがな。
「しずちゃーん」
どこか遠くの方で俺を呼ぶ声が聞こえる。静ちゃん、なんて呼ぶのは臨也の他に誰もいない訳だから臨也が呼んでんだろう。たぶん別れ話をされるんだろう。嫌だけど臨也が望んでるなら……
「静ちゃーん、…あ、いた。探したんだからー」
俺は覚悟して臨也に目を向けた。そしたら臨也は小さく¨うっ¨と唸った。
「いや、あのね。さっきの見てたでしょ?その…ドタチンとの」
俺は小さく頷いた。
「えーっと、その……」
臨也は言いづらいのか言葉を濁す。俺はもう振られる覚悟はあるんだからさっさと言えよと苛立ってきた。
「おら、さっさと言えよ」
「うー…、怒らないでよ?そのね、静ちゃんにヤキモチ妬かせたくてドタチンにキスしたフリをしたのっ」
「そうか、わかっ…た?」
俺が予想していたセリフとは、遥かに違ってた。俺を妬かせたくてキスのフリ?ふと臨也の顔を見れば真っ赤に染まっていた。
「俺を妬かせたくて、」
「うん」
「キスしたフリ?」
「そうだよ!そう言ったじゃん!静ちゃんの耳は飾りなの?」
確かめるように臨也に聞けば、更に顔を赤く染めた。それを聞いて俺は安心したのかその場に座り込んでしまった。
「ちょっと静ちゃん?どうしたの?怒った?」
臨也の声はちょっと震えてて、びくついていた。俺は立ち上がり臨也を抱き締めた。
「よかった、振られるかと思った」
「なんでよ?」
「いや、門田にキスしてたし。俺は手前を傷付けることしかできないからよ」
「だから!ドタチンとはキスしてないから!それと、俺は静ちゃんといて幸せなんだから。傷付けられたなんて思ったことないよ?」
そう言った臨也の声は優しく、顔は見えないけどたぶん笑ってんだろうな。
「言っとくけど臨也、俺は手前と門田が一緒にいるの見てるだけでもヤキモチ妬いてんだ。あんまり一緒にいるんじゃねーぞ」
「うんっ!」
そう答えた臨也は俺にぎゅうぎゅうと抱き着いてきた。それからしばらく抱き合って、二人で仲良く手を繋いで帰りました。
後日談
「ちょっと聞いてよドタチン!静ちゃんってばね、俺とドタチンが一緒にいるだけでヤキモチ妬くんだって!」
「そうか、よかったな」
「いーざーやーくーん?なに言いふらしてんだよっ」
「いや、だって嬉しくって」
そのまま二人は鬼ごっこに入り、次の授業には来なかったとか。