静ちゃんと同棲し始めてから、もう1年がたとうとしていた。
そんなある日朝起きたら、不思議な感触がお腹辺りに感じた。なんかすごく温かくて。
「ねぇ、静ちゃん。お腹の辺りなんか温かくない?静ちゃん触ってんなら止めてよ。朝からそんな元気ないんだから」
静ちゃんを見れば、静ちゃんも不思議そうな顔をしている。
「は?なに言ってんだ?触ってんのは手前じゃねーのかよ」
「違うよ。……じゃあ、誰が?」
俺と静ちゃんは恐る恐る布団を捲ってみた。そこには何故か、俺たちに似た5歳くらいの子供が二人居た。
「え?静ちゃんって子持ちだったの?ひどい、俺とはお遊びだったのね」
なんてすすり泣く振りをしてみた。
「んな訳ねぇだろ。つか、片方は手前に似てんだろうが」
静ちゃんの言う通り二人のうち一人は俺にとても似ていて、いつも着ているコートを白に変えたものを着ていて、頭にはヘッドホンを着けている。もう片方は静ちゃんに似ていて、青の羽織りに中は着物を着ていた。
静ちゃんの小さい頃はこんな感じなのかなと思ったらすごく可愛く見えてきた。
「とりあえず、どうする?」
「そうだな、こいつら起こして話聞くしかねぇだろ」
「それしかないよね、可哀想だけど起こすか」
二人の肩をゆすってみても、起きる気配はなく、小さく縮こまったり小さい声で¨むぅ¨と寝言らしきものを言っている。
「かわいいな、これ」
そう言って、静ちゃんは俺に似たヘッドホンの子の頬を突っついている。確かにかわいいけど、そんなことしてる静ちゃんの方がかわいいと思う。そんなこと言えば怒るだろうから口には出さないどく。
「起きないみたいだから、俺は朝ごはん作ってくるね。静ちゃんはその二人見てて。起きたら呼んでよ」
「分かったよ」
こんな会話してるとまるで子供がいる夫婦だな、なんて思ったりして。静ちゃんの子供欲しいなとか思いながら、俺はキッチンに立ち朝ごはんの準備を始めた。
俺と静ちゃん、あとあの二人の子供のご飯の準備ができた頃に静ちゃんに呼ばれた。急いで寝室に行けば、さっきまで寝ていた二人がベッドの端に腰掛けて起きていた。
「起きたんだ?」
「ついさっきな。とりあえず、名前聞くか。なんて呼べばいいかわからないしな」
静ちゃんは、腰掛けてる二人の傍に行きしゃがんで¨名前はなんて言うんだ?¨って聞いていた。
「………」
ヘッドホンの子は着物の子の後ろに隠れてしまった。静ちゃんの怖そうなオーラにでもやられてしまったのか、なんて考えてれば着物の子が話し出した。
「俺が津軽で、後ろのがサイケです。サイケは人見知りなんで」
「津軽とサイケね、わかったわかった。とりあえず、ご飯出来てるから食べようか。話は食べてから聞こうか」
そう言うと、津軽はサイケの手を握って俺たちの後ろに着いてきた。ひよこみたいでかわいいな〜
津軽とサイケを椅子に座らせて、ご飯開始。¨いただきます¨と俺と静ちゃんが言えば小さい声で二人も¨いただきます¨と言っていた。
食べ終わり、皿も片付け洗い終わったあと津軽とサイケに向き合う形で座った。
「まず、俺たち名乗ってなかったね。俺が折原臨也でこっちが平和島静雄」
「……、いざやくんとしずおくん?」
サイケが小さい声で名前を呼んだ。¨しずおくん¨って、思わず笑いそうになれば静ちゃんに睨まれた。
「そうだよ。とりあえず、サイケと津軽はどうしてここにいるのかな?」
「メガネを掛けた人が俺たちをここに連れてきたんです」
津軽がそう答えてくれた。
メガネ?メガネってまさか?って言うかこんなことするのって一人しかいないよね。静ちゃんの顔を見れば、静ちゃんもそう思ったみたいで二人同時に叫んでた。
「新羅のやつ!」
「新羅のやろー!」
その声に、津軽とサイケはびっくりしたようでサイケはちょっと泣きそうになってる。サイケの傍に行き、頭を優しく撫でる。
「ごめんごめん、君たちを怒鳴った訳じゃないからね」
サイケは気持ち良さそうに撫でられていた。
「ちょっと俺、新羅に電話かけてくる。静ちゃんは二人見てて」
そう言い、三人から離れて新羅に電話した。何回かのコールのあと、あの軽い口調と声が聞こえてきた。
「もしもし?そろそろ電話来ると思ってたよ」
「ちょっとなにあれ!?俺たちに育てろって言うの?」
「あれは、僕が作ったロボットだよ。ご飯をあげればちゃんと育つよ。前に臨也が子供が欲しいとか言ってたから作ってみたんだけど?」
俺が原因だったのか。確かに子供が欲しいとか新羅の前で言ったけど……。まさか作るとは思わなかったし。
「かわいいでしょ?二人でぜひ育ててよ」
「…わかった」
そう言い、俺は電話を切った。
三人の居る部屋に戻ると、三人仲良く遊んでいた。
「新羅なんだって?」
俺に気付いた静ちゃんは声をかけた。さっきの電話の内容をそのまま話した。
「そうか。子供嫌いじゃねぇし、手前とだったら育てられそうだ」
静ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。ああ、もうきゅんきゅんするじゃないか。
「静ちゃん大好き、愛してる」
俺は静ちゃんに抱き着いた。津軽もサイケも驚いた表情をしてるけど、そんなこと気にしない。俺は力を強めてぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「津軽もサイケも見てんだろうが!離れろよ」
「えー、やだ。静ちゃんと居たいもん」
「おれも、いざやくんとしずおくんぎゅうってやる!」
サイケが向こうから飛び付いてきた。津軽が更に驚いてる。
「津軽もおいで?」
恥ずかしそうにこちらに寄ってきて、足元にぎゅうとしがみついた。
これから、俺と静ちゃんの子育て奮闘が始まるのであった。