「あの棒下って一年、むかつくよな」


「それ俺も思ってた!いきなり練習試合出してもらえるとか有り得ねえだろ」


「ちょっと大人しくさせといた方が良くね?」


「体操服カッターてで切るとか?やべ、ただの虐めじゃん」






バスケ部に入部して既に三ヶ月が経とうとしていた。自分はあまり関わる事はないが他の奴らを見る限り先輩達とも
上手くやれているし何も問題無く日々が過ぎて行った。そんな中自分は昨日部室に忘れてしまった音楽プレーヤーを
回収する為にこうして貴重な昼休みに部室へ足を運ぼうとしたのだが其れは中から聞こえてくる声によって留められる。


声とその内容を聞く限りでは二年生の部員である事が分かった。
下らない話と汚い笑い声のせいで眉間に皺が寄る。






「そんなんよりさ、…レイプとかのが効果的だろ」


「確かにあいつ顔は綺麗だったしな、それだったら俺らもスッキリするし一石二鳥じゃん!」


「だろ?我ながら良い意見だわ、俺」


「じゃあ放課後後あたり体育館倉庫呼び出そうぜ」






体の体温が急激に下がった様な気がした。ただ扉の前に突っ立っている自分に部室から出てきた彼等は驚きつつも
どんな意味が含められているか分からない笑みを浮かべて通り過ぎて行こうとした。しかし、彼等の足は自分が相手の
腕を掴んだ事によって制止される。






「っと、何すんだよ」






腕を掴まれた生徒が怪訝な表情を浮かべた。お前なんかに睨まれても全然怖くねえよ、そう考えれば空いている方の
手を固く握り締めて拳を作ればそいつの頬を思いっきり殴る。至近距離で殴った為に衝撃を強く受けたそいつの体は
いとも簡単に床へと崩れ落ちる。口の端から流れる血、其れを見ても何とも思わない自分に少し寒気がした。






「てめえ…!」






油断していた。床に座り込んだ方に視線を向けていればもう一人に胸倉を掴まれ、同じく頬を殴られる。
しかし人の顔を殴ったという経験がないのだろう、其れは自分にとってはまだ弱々しく足元をふらつかせたが
床に座り込む程の威力ではなかった。すかさずそいつの鳩尾に蹴りを一発入れれば倒れない様にとそいつの
シャツを掴めば片手を其の頬に振り下ろした。


其れからはよく覚えていない。気付いた時には自分は教師に体を押さえつけられていた。






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「どうしてあんな事をした」






薄暗い空き教室で顧問と一対一。何が悲しくてこんな中年と二人きりにならなければいけないのだと
ぼんやり思うが今はふざけられる様な雰囲気でない事を理解する。
もう何度も聞いた質問を繰り返し、鋭い目で彼は此方を見るが自分の口が開く事はなかった。






「何はともあれ、お前は二人の二年生に怪我を負わせたんだ。学校側も今回は二週間の停学と退部で許してくれる」






もう二度とあんな事はするな、そう言われて教室に一人残された。
教室へ鞄を取りに行った時、まだ残っていた生徒達に浴びせられた怯えた視線よりも
棒下に訊ねられた顧問と同じ問い掛けが無性に辛く、何も答えないまま逃げる様に教室を後にした。






ほんとは
(停学中の二週間は恐ろしい程長く感じた)
(俺はお前を守るヒーローになれはしないけど)
(せめて出来る事はしてやりたいと、そう思ってただけなのに)






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実は笹井は元バスケ部で退部した理由
棒下は本当の事を知らない、これから知るかどうかも未定
棒下は笹井の事好きだけどこの一件があるから何処か信用しきれない










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