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部活を強制的に休まされた仁王は、久し振りに私と一緒に歩く。
ふらふらと揺れていた私の手はいつの間にか大きな手に捕らえられて、強く指を絡められる。

「亜紀ちゃん」

公園に入って、二人並んでベンチに座って。
名前を呼ばれて視線を向ける。

「今更言うのもなんじゃけど、ちゃんと言っておきたいんじゃ」
「なに?」

真剣な顔に、びくりとする。
数秒の沈黙。

「亜紀ちゃんのこと、本気で好いとう。また、俺と付き合ってもらえんか?」

どこか緊張していた私に告げられた言葉。
予想もしていなかったから、驚いて直ぐに言葉が出てこない。
何も言えずにいる私を見て、仁王が困ったように眉尻を下げた。

「…亜紀、ちゃん?」

改めて言われた言葉に、顔に熱が集まる。
今の私は、きっと真っ赤な顔をしているのだろう。
顔どころか、耳や首筋まで赤くなっているかもしれない。

「馬鹿」

やっと出てきた言葉は、それだった。
仁王の視線が、下を向く。

「仁王の、馬鹿。断るわけ、無いでしょ」
可愛くない私の返事。
仁王の視線が、ぱっと私の方に向けられた。
目が、まん丸。

「仁王のこと、好きだもん。断るわけないよ」

続ける私に、仁王の顔が色付いた。
少し赤くなった顔で、へにゃりと笑う。
それにつられて、私も笑う。
お互い、赤い顔。

「酷いこと言うて、ごめん」
「もーいーよ」

至近距離で頭を下げるものだから、額同士がゴチンとぶつかる。
それに少しビックリして、小さく笑って。

「守ってくれて、アリガト」

小さな声で告げれば、唇に触れた柔らかい感触。
驚いて目をぱちくりさせていたら、悪戯な笑みを向けられる。
…やられた。

「ごちそうさま」
「にお!」

やられっぱなしにされてたまるか。
少し離れた距離を、仁王のネクタイを掴んで引き寄せて。
私の方から、キス。
すぐに離れれば、驚いたように目を見開いて。
瞬きを1つしたかと思えば顔を真っ赤にして、その顔を片手で覆う。

「やられた」

恥ずかしい、とも思った。
けれどそれ以上に、幸せだと。
心から、そう思った。




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