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ブツ、という音が聞こえた気がした。
鈍い感触とほぼ同時だったそれが気になって、感触を伝えた足元を見下ろせば。
「…あー」
上履きの、靴紐が。
これまた綺麗に、ブッツリ切れていた。
「亜紀、どーし…ってあらま。縁起悪いね」
「え、靴紐切れたとか初めてなんだけど。購買で靴紐だけって売ってたっけ?」
隣を歩いていた友達が、私の視線を追ってあららと呟く。
購買で売っているものを思い浮かべる。
靴紐、靴紐。あれ、靴紐って売ってたっけ?
「靴とセットでしょ、普通。ばら売りしてないんじゃない?」
「うわーマジですか。どーしよ、コレ」
流石に靴紐切れた状態では歩きにくい。
脱げる、絶対。
「…ホッチキスで応急処置しとくとか…?」
幸いにも、自分の教室まではそんなに距離はない。
教室で切れたところをホッチキスで止めてしまおうか。
「いや、流石にそれはやめよーよ。それより裁縫道具じゃない?」
「あ、その手があったか」
持つべきものは友達だよなあ、と何となく思ってしまった。
普通裁縫道具が先に出てくるんだろうけど、どこをどう間違えたのか。
私が思いついたのは、よりによってホッチキス。
え、この場合変なのはやっぱり私なんだろうか。
「でも私裁縫道具持ってないよ?」
「…アタシ持ってるから貸してあげるよ」
貸してあげるって言われても。
私、裁縫大の苦手なんですけど。
知ってるよね?
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