13
「おはよ、仁王」
「…はよ、」
今朝もいた。やっぱり、いた。
私の席に座って伏せていた仁王をつついて挨拶すれば、のそりと起き上がって欠伸を1つ。
それにしても、今日は随分と眠そうだな。
「眠そうだね、どうしたの?」
「んー…、今日は、遅刻せんかったぜよ」
そう言ってへらりと笑う仁王。
何ですか、この可愛いの。え、中学生男子でこの可愛さって反則…!
思わずえらいと言って頭を撫でれば、気持ち良さそうに目を細めた。
あれだ、猫っぽいのかこの子。人懐こい白猫。
「朝練、そんなに早いの?」
「んー…普通、なんじゃなか?」
朝練というものをしたことがないから、何時からするのが普通なのかは知らないけれど。
それでも、こんなに眠そうにしているのは何故なのだろうか。
「低血圧?」
「あー、確かに朝は体が動かんで辛いのう」
そう言いながらガタンと音を立てて席を立つ。
持っていた鞄を机の脇に掛けて、フラフラと教室を出て行く仁王の後を追う。
廊下に出ると、窓側の壁に寄りかかるようにしてしゃがみ込む仁王の隣に同じくしゃがみ込む。
「朝、何かしてるの?」
「まあ、野暮用。亜紀ちゃんが気にするようなことじゃなかよ?」
また、欠伸。どんだけ眠いの、この子。
膝に顔を埋めて、目を閉じているあたりよっぽど眠いらしい。
「無理、しないほうがいいよ?保健室行く?」
「ダイジョーブ、」
そういって笑うけど。
仁王が心配なのは本当だから、無理はして欲しくない。
それにしても、仁王は一体毎朝何をしているというのだろうか。
気にはなったけれど、仁王が言おうとしないなら私は聞かない。
仁王が、言ってくれるまで。
[*prev] [next#]
TOP