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「おはようございまーす」

がちゃ、と部室のドアを開けたらそこにいたのはまだ着替えている部員の方々。
一斉にドアの方を向いて、それぞれがポカンと口をあけてる。
少しマヌケな顔だなあと思うけどそれは心にしまっておくことにして、そのまま部室の中に入る。

「気にせず着替えて構いませんよ」

私の言葉に微妙な雰囲気のまま着替えが再開される。
それに背を向けて、棚から過去の記録を取り出して目を走らせる。

「おはようさん」

1人、新たに部室に入ってきた影。
欠伸をしながらドサリと荷物を置いて、ロッカーに手をかけて止まった。

「…なんでチビ女がいるんじゃ、追い出さんのか?」

チラリと視線を向けられたから小さく挨拶をして会釈する。
いつものことだ、どうせ顔も名前も覚えられていないのだろう。

「馬鹿、あいつマネージャーの妹だぜ」
「はあ?妹だからってなんで部室に入れるんじゃ、おかしくなか?」
「おっまえな。妹もマネージャーやってんだ、一昨日から」

後ろでヒソヒソと交わされる会話。
聞こえないように言ってるようだけど、バッチリ聞こえてる。
そういえば、一昨日の部活の時にはあんな銀色の派手な頭なんていなかった気がする。
遅刻してきたか休んだのかもしれない。それなら知らないのも頷ける。

「へえ、お前さんマネージャーの妹なんか」
「浅見です。よろしくお願いします、仁王雅治さん」

それだけ言って、ノートとストップウォッチ片手に部室のドアに手をかける。
後ろでこそりと『姉と違って妹は可愛くなかね』と言うのが聞こえた。
自分が可愛くないのは、誰より自分がわかってる。



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