02
「今日から1人、新しいマネージャーが入ったから皆よろしくねー。あたしの妹の楓」
「よろしく、お願いします…」
ジャージ姿で、テニス部の部員の前で頭を下げる。
姉は良くできましたと頭を撫でてくるけど、向けられる視線は複雑な感情を孕んでて少し泣きたくなる。
「あたしは今日からこの子に教えながらの仕事になるから、あんまり手が回らなくなるかもしれないけど 皆手伝ってね。よろしく」
にこやかに言う姉に向けられる視線は好意的なものなのに、私に向けられる視線はそうじゃない。
逆にちょっと刺々しい、鋭い視線。
「じゃあ基本的な仕事からね。まずこっち」
「、はい」
手を引かれて、部室の中に戻る。
姉の説明を聞いて手元のメモ帳に書き写していく。
ドリンクの粉の場所、作り方、救急箱の保管場所に部活に必要な道具の数々。
頭は忙しく回転して覚えようとしている片隅で、先ほどの視線が今も刺さったままのように感じていた。
「楓、元気ないね。疲れた?」
「大丈夫、慣れないことばっかりで必死なだけだよ」
心配かけないように少し笑って、メモ帳にペンを走らせるふりをする。
入部したからには、きちんと仕事を覚えなければ。
気ばかり焦って、メモ帳に書き写した内容はあまり覚えられなかった。
[*prev] [next#]
TOP