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「悠先輩、楓ちゃんだけに任せて大丈夫なのかな」
これは全員が思ったことかも知れない。
パッと見た感じでは、妹の楓が料理出来るようには見えないらしい。
幸村君が心配そうに言うのを聞いて、笑顔で返す。
「心配ないよ、あの子あれでも料理上手いんだから!あたしが保証するよ」
あたしは料理がてんでダメだけど、楓は料理が上手い。
親が居ない時の料理は、いつも楓がしてくれる。
レパートリーは多くないけれど、最近少しずつ増えてるようだし。
「へえ、じゃあ期待してもいいかもな」
ジャッカル君の言葉に、大きく頷く。
あたしはあの子の料理が好き。自慢できる妹だと、本気で思う。
***
姉の期待を他所に、私は1人奮闘中。
何しろ人数が多すぎる。こんなに量が多いと、どれくらい作っていいのか分からない。
白米はあと10分もすれば炊き上がるから問題はない。
作るべきはお味噌汁と、野菜炒めに卵焼き。
先にお味噌汁と卵焼きに取り掛かって数分。
味に自信はないが、お味噌汁は完成。卵焼きも形こそ歪だけど、完成。
問題は野菜炒めだ。野菜は炒めるとしんなりして嵩が減る。
だからこそ量が分かりにくくて困るのだ。
「お困りみたいじゃのう」
「あ、仁王先輩」
「暇じゃき、様子見に来たんじゃが…手伝った方が良さそうやの」
これぞ天の助け。遠慮なく手伝っていただくことになった。
はい、と手渡したのはピーラーとニンジン。
何も言わないのに、仁王先輩はさっさとニンジンの皮むきを始める。
特に問題無さそうなのを横目で確認して、ザックザックとキャベツを刻む。
食べ盛り中学生が14人もいるとなるとキャベツ1玉で足りるか心配な気もするけど。
他にも野菜を入れるつもりだから、なんとかなるだろう。
仁王先輩からニンジンを受け取って、今度は半分に切ったピーマンを手渡す。
それも何も言わずに種取りをしてくれる。手際がいい。
「仁王先輩ってもしかして料理できたりします?」
「さあ、どうじゃろうな?」
はぐらかして答えないつもりらしい。
こんな会話ばかりだからミステリアスだなんて言われるんだ。
「料理できると思うことにします」
「勝手じゃのう」
だって手際が良い。そう言えばピヨ、って返された。
どんな返事ですかそれ。
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