After flower





  柳生
  丸井
  ジャッカル
  切原
  
  真田
  幸村













 -柳生-



「やぎゅー!」
「おや、仁王くんではありませんか。それに北河さんまで」

珍しく教室に仁王君が訪ねてきたかと思えば、隣には北河さんまで。
向けた視線がぶつかって、苦笑を返され。

「どうかしたのですか?」
「歴史の教科書忘れたから借りたいんじゃけど」

そうでしたか、と言って自分の席まで教科書を取りに戻る。
その時にちらりと二人を伺えば、北河さんが仁王くんに何かを言ってバシバシ叩いている姿。相変わらずの様子だと思いかけてから気付く。
先ほどまでは見えなかったけれど、隠れるようにこっそりと繋がれた手。

「お待たせしました。今日はもう使わないので、返してくださるのは明日でも構いませんよ」
「おぉ、悪いのう。じゃあ借りてくぜよ」

歴史の教科書を手渡すと、くるりと方向転換して手を振る姿に一言。

「仁王くん、おめでとうございます」

何が、とは言わなくても分かるだろう。
その証拠に、にっこり笑った仁王くんが嬉しそうにおぉ、と返してきたから。
隣の北河さんは少し怒ったようにまた仁王くんをバシバシと叩いていたけれど。

「片想い1年でやっと実を結びましたか」

何にしろ、喜ばしい事だ。



せなら何も言うことはありませんよ


















 -丸井-



「におー、お前なんか良い事でもあったのかよい」

全国大会後、全員が多少気落ちしている中で1人様子が違った。
気になって聞いてみれば、笑顔でおう、とか返され。

「ふーん…。え、もしかして北河とか?」
「お、ブンちゃん鋭いのう」

大当たりらしい。
まあ仁王を一喜一憂させるのなんて北河以外に思い付かないし、当たり前といえば当たり前かもしれないが。
それにしても。

「よーやくくっついたのかよ」

それが正直な感想。見ているこちらがじれったかったくらいだ。
何でくっつかないのかが不思議なほど。
本人たちが幸せなら、別に構いはしない。

「おら、祝いにやる」

手渡したのは、ビターチョコ。





どーせ甘甘なんだ、少しいくらいでちょうどいいだろぃ






















 -ジャッカル-



「あれ、北河?」

昇降口の下駄箱に寄り掛かっている女子を見つけて、声をかける。
テニス部のレギュラーと仲の良いヤツだ。

「あ、ジャッカルだ。今日は丸井と一緒じゃないんだね」
「今日は切原と一緒にケーキ食いに行くんだと。俺は用事があってな」

用事があって良かったね、なんて言われる。
全くだ。一緒に行ってたら奢らされてる。

「北河は誰か待ってんのか?」
「んー、まあね」

言いにくそうに言葉を濁す。
視線が宙を彷徨うのを見て、ピンときた。

「あー…、仁王か?」
「…当たり」

一緒のクラスなのに、何でこんなところで待ってるんだ。
そう聞けばどうやら先生に捕まって職員室に行っているらしい。

「一緒に帰るって言ってたから無視して私だけ帰るわけにもいかないし」

無視して帰れば拗ねて後が面倒だし、と。
そう言う彼女の顔を見てわかった。

「…へえ。もしかして、仁王と付き合い始めたか?」
「綾ちゃんお待たせー。…ってジャッカル!綾ちゃんは俺のだから手ぇ出すんじゃなか」

北河が口を開く前に、昇降口にやってきた仁王が答えを口にした。
それよりも。

「何で俺が北河に手ぇ出すんだよ」
「だって綾ちゃん可愛いし」

ああもう、勝手に言ってろ。
仲間の幸せを喜ぶべきなんだろうけど、それよりも北河に少し同情する。
仁王を相手にするのは疲れそうだ。





まあなんつーか…張れ、北河























 -切原-




「あれ、仁王先輩に北河先輩じゃないっスか。珍しいっスね、購買に二人でくんの」

昼休みの購買で仁王先輩だけを見かけることは良くあるが、北河先輩も一緒というのは初めて見た気がする。
ざわざわとした中近付くと、二人の手に紙パックのお茶があるのが見えた。

「自販機ぶっ壊れとったからのう。仕方なしにこっち来たんじゃ」
「そーいやそうでしたっけ」

自分はもう買うべきものを買っていたので、二人と一緒に購買を離れる。
両手にパンとジュースを持って一歩後ろを歩いていて、気付く。

「…もしかして付き合い始めたんスか?」

そう聞いたら、前を歩いていた北河先輩が凄い勢いで振り向いた。
珍しくもひどく驚いた顔をしてる。そんなに驚くようなことを言っただろうか。

「え、えええ!何でそう思うわけ切原、ねえ!」
「いや、何となく…。雰囲気とか、前と立ち位置っつーんスか?違う気がしたんで」

北河先輩の、仁王先輩の前での雰囲気が柔らかくなった気がする。
それよりも分かりやすいのが仁王先輩だけど。甘甘だ。

「あー…なんでそんなトコばっか鋭いの切原は」
「そりゃ気付きますって」

本人たちはあまり気付いてないようだけど、以前の二人とは明らかに違いすぎるから。





いーなー、俺も彼女しくなってきた!




















 -柳-




「あれ、柳」
「北河か」

図書館へ行ったら、珍しい二人がいた。
まあ1人はいつも図書館に来ているから珍しいことはない。
珍しいのはもう1人の方。

「珍しいな、仁王まで図書館にいるとは」
「なんかついて来た」

チラリと仁王に視線を向ければ、机にペタリと頬をつけてつまらなそうにしている。

「まあ仁王がここに来ても珍しいと思うことはなくなると思うがな」
「え、何それどういうこと?」

貸出処理を終えた本を片手にした北河が首を傾げる。

「北河が図書館に来るのなら、一緒に仁王も来るだろう?」

仁王のことだ、少しでも一緒にいたいというのと虫除けの意味もあるのだろう。
きっと北河と一緒に図書館に来ることになる。

「…否定できないのが何か悔しい」

疲れたように溜め息をつく北河の頭をポンポンと軽く撫でてやる。
少し奥に居た仁王がそれに反応して、椅子がガタンと大きな音を立てた。

「付き合っているのならそんなものだろう?」
「…まあ何というか、やっぱり柳は知ってるわけだ」

何処から情報仕入れてくんの、と溜め息をつく北河の側に仁王が寄って来る。

「綾ちゃん、本借りたならもう帰ろ」
「はいはい。んじゃね、柳」

仁王に引っ張られていく北河がヒラヒラと手を振るから、こっちも手を振り返す。
予想通りの結果になっていたことに、安心した。





白いデータがとれそうだし、な

















 -真田-



移動教室から自分の教室へと戻る時に階段で見かけた人影。
見慣れた銀色が壁に向かって俯いていたから声をかけようとして、止まる。
チラリと見えたそれに、状況を理解するのが少し遅れた。

「…た、た…たるんどる!!!!」

ビリビリと踊り場に声が反響する。
くるりと振り返った仁王の影にいる人物が誰か理解して、溜め息。

「真田、お前さんうっさいぜよ」「公共の場でそのような…少しは慎まんか!」

仁王の腕の中にいたのは北河で、少し顔を赤らめている。

「僻むんじゃなか」
「だ、誰がだ!」

仁王が呆れたような顔をする。
その隣では北河がバシバシ仁王の背中を叩いているようだ。

「交際している男女ならまだしも、」
「お前さんの目は節穴か?」

言葉を遮られる。
溜め息と共に仁王が北河の肩に腕を回す。

「俺ら付き合っちょるんじゃけど」

言葉を失った。





こ、際など…たるんどる!!!!


















 -幸村-



「やあ北河さん」
「………あのさあ。毎回思うんだけど一体どっから出てくんの?」

声をかけたら呆れたような顔で見られた上に溜め息までつかれた。
どこから、なんて聞かれても。
因みに今いるのは資料室。

「それは企業秘密だよ」
「聞いた私が馬鹿でした」

諦めたように返される。
まあ答えたところでヘンな顔をされるだけなんだけど。

「それより、良かったね。仁王と付き合ってるんだろ?」
「ノーコメント」

だんまりを決め込んだところで無駄だけど。
ふふ、と笑う。

「やっぱり全国終わった直後だったね。さすが俺だと思わない?」
「……」

ピクリと反応するけど、言葉で返されることがない。

「仁王も可愛いよね、切欠ないからもう言えないとか。あれでビビりな所があるから面白いよね?」
「……幸村」
「うん?」

くるりとこちらを向いた北河さんの顔はそりゃあもう凄い。
せっかくの可愛い顔がこうも怖くちゃあね。

「見てたの?!」
「まさか。この俺が出歯亀なんて低レベルなことすると思う?」

じゃあなんでそんなに詳しく知ってるの、と詰め寄られる。

「教えてくれたんだよ」
「………」

疲れたように溜め息をついてもう誰が、とも聞いてこない。
代わりに。

「もー出てけ」

祝いの言葉をかけたかっただけなんだけど、機嫌を損ねてしまったらしい。





が知らないわけ、ないだろう?







[*prev]



TOP

「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -