23
関東大会、決勝。
信じられないものを見ている気がする。
言葉がでない。
コートで円陣を組む彼らを、ジッと見つめる。
「…綾?」
何も言わない私が気になったのか、隣にいた友達が声をかけてきた。
それに大丈夫、と返してコートに視線を向ける。
ちょうどレギュラー陣がバラバラとコートの外に向かうところだった。
「お疲れさま」
出てきたレギュラーと移動して、そう声をかける。
誰も、何も言わない。
「…悔しい?」
仁王に、こっそり聞く。
珍しく表情のない仁王が、無言で頷く。
「なら、良かった」
「…なん?」
怪訝な顔で聞かれるけど、それに笑顔で答える。
悔しいと思うのは、良い事だと思うから。
「悔しいなら大丈夫。まだ上にいける」
諦めてしまった人は、もう上は目指せない。
悔しいなら、その悔しさをバネに上を目指して進める。
あまり大きくない声でそう言ったつもりだったのだけど、全員に聞こえていたらしい。
皆が目を丸くしてこちらを見ていた。
「…え、え?」
あまりにマジマジ見るものだから戸惑っていたら、いきなり仁王に抱きしめられた。
「ちょ、仁王何してんの?!」
「…ちょお、このまま、」
どうしようと視線で助けを求めてみるけど、皆助けてくれる気配はない。
真田とか柳生は顔を赤らめてそっぽ向いてるし。
柳とか丸井とかは苦笑してたり呆れたようにこっちを見ているだけだし。
諦めて、抱きつかれたまま仁王の頭をポフポフ撫でる。
「…綾ちゃんは、」
「ん?」
「綾ちゃんはやっぱり、あの時と変わらん言葉をかけてくれるんじゃな」
あの時って、何時だろう。
ぼんやり思ったけど、黙っておく。
今は、すぐ側にあるこの体温が心地いい。
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