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ここ数日、仁王との会話が殆どない。
おかげで自分の時間がとれて、小説を読む時間が増えたのは嬉しい。
けれどそれが何故か物足りないと感じている自分が居るのも事実。
頭を抱えて溜め息をついていたら、カラカラと戸がひかれる音がした。

「あれ、綾まだ残ってたの?」
「んー、考え事をね」

もう一つ溜め息をつけば、ニヤニヤ笑いの友達が前の席に横向きに座ってこちらに頬杖をつく。
何か言いたげな顔だ。

「…何」
「ん?いやあ、…仁王君のこと考えてんでしょ?」

大当たり。何も言えずにいると、友達がさらに笑いを深める。

「図星かあ。…ここ何日か会話なくて寂しい?」
「…」

口にするのは少し悔しいけど、事実。小さく頷く。

「自分とじゃなくて他の女の子と話してるの見て、イヤだった?」
「…わかんない」

イヤかどうかというより、少し悲しかったような、複雑な気分だった。

「じゃあ、仁王君が側に居ないと落ち着かない?」
「…」

また、小さく頷く。
仁王が側に居ないだけなのに、物足りない。気になって、落ち着けない。
自分のクラスはこんなに居心地が悪かっただろうかと思うほどに。

「じゃあ、もう答えは出てるでしょ」

顔を上げると、にっこりと笑った友達に頭をグリグリと撫でられて。

「行ってきな。テニス部そろそろ練習終わる時間だよ」
「ん」

ガタンという音とともに席を立って、鞄を引っ掴んで教室を出た。
急ぐ足で向かうのは、ただ一つ。





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