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「おはよ」

そんなこんなで、地区予選当日。
テニス部レギュラーは私の付き添いにOKを出した上に差し入れ催促してきて。
おかげで私は大荷物(ってほどでもないが)です。
だってお弁当二人分に差し入れを人数分。プラスアルファで飲み物持参だしね。

「お、北河じゃーん。差し入れ持ってきたかよい」
「第一声がそれか、デブン太め」

丸井にデコピンして、荷物を置く。
重たくてとてもじゃないが長時間持っていられない。

「随分大荷物だな、北河」
「どこかの誰かに差し入れ催促されたもので。いらないならあげないけどね、柳」
「そんなことは言っていないだろう?」

まあ貰ってもらわないとこっちも困るが。
妙に張り切ってしまって、差し入れのお菓子は個人の味の好みに合わせてある。
それでも丸井なら大喜びで平らげそうな気はするけど。

「差し入れ、何スか?」
「マフィン。切原って甘いの好きだったよね?」
「大好きッス!やりぃ、楽しみ〜」

切原は可愛いよね、正直だ。まあキレるのはどうかと思うけど。赤目、だっけ?

「切原は可愛いね、うん。歳相応だ」
「それはどういう意味かのう?」
「え、だって基本的に切原と丸井を除いたレギュラーって中学生に見えない…」

正直に言ったら仁王に頭を軽く叩かれた。
軽く睨んでやったら真田と一緒にするんじゃなか、と怒られた。
まあ私も真田と一緒の扱いはイヤだな、うん。ごめん。




 ***




試合はと言えば、何かあっという間に決着がついていく。
当然のように1ポイントも落としていない。実際目にすると圧倒的だというのが分かる。
ラリーが続くこともない。

「じゃから、面白くないって言った」
「…ここまで力の差があるとそう言いたくもなるね」

侮ってました。正直、言葉も出ません。
相手校はついてないとしか言えないんだろう、とか思った。
これじゃあ優勝という夢は持てないよね、立海と同じ地区の限り。

「どうせもう昼じゃし、赤也の試合が終わったらあっちいくぜよ」

仁王の言葉のすぐ後に、切原の勝利を告げるコールが聞こえた。

「言った側から終わったようじゃの。行くぜよ、綾ちゃん」
「はーい」

仁王を先頭に、ぞろぞろコートの側を離れる。
まだコートの中にいた切原が後ろで叫ぶのが聞こえたけど、誰も振り向いてない。
ごめんよ切原、君を待ってないでさっさと移動してお弁当食べたいんだ。




 ***




「ほい、仁王」
「ありがとさん」

会場の片隅にある芝生に座って、持ってきた荷物を広げる。
二人分のお弁当は当然自分と仁王の分。
普通に手渡したら、周りが何故か驚いた顔。

「え、何?」
「何で北河が仁王に弁当渡してんだよい!」
「仁王先輩だけズルイっスよ!」

忘れてた、仁王にお弁当作ってきてるのまだ誰にも言ってないんだっけ。
柳くらいは知ってそうな気はするけど。
だからか、みんな驚いた顔してるのは。

「ズルくなか」
「一口寄越せよい!」
「イヤじゃ」

伸びてきた丸井の手を仁王が払い落としてる。
丸井の他にも切原とかも手伸ばしてるよ。
ココだけ戦場だな、柳とか柳生のいるあたりが平和に見える。

「なんでそんなにお弁当食べたいのアンタ等は」
「だって!」
「北河先輩の弁当なんてレアっスよ?!」

レアもの扱いか。週に数回作ってるから別にレアでもないんだけど。
そう言えば、でもやっぱり食いたいっスよと帰ってきた。

「だからって人の弁当に手伸ばさないの。差し入れ抜きにするよ」
「えー!」

呆れた顔して言ってやれば、思いっきりブーイング。
じゃあ黙ってさっさと自分のを食べろよ。

「今度作ってくるから。それでいいでしょ」
「マジかよ?!」
「やっり、約束ッスよ!」

手のかかる弟が出来た気分だ。
周りにも食べるかと聞くと、食べるという返事。
隣で仁王は面白く無さそうにしてるけど、この際無視だ。

「柳、ちゃんと躾けようよ」
「生憎これらの飼い主は俺じゃなくてな。どちらかというとお前だろう?」

えー、と言ったら頑張れよって返された。
柳生も微笑ましいですねとか言って笑ってるんじゃないよ。





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