丸井発見!
「丸井ー、『Trick or treat?』」
「あ?」
食堂近くで丸井を発見したので早速声を掛けてみたらヤンキーかって位に迫力のある返事をもらいました。こえーよ馬鹿!
「ガラ悪ーーい怖ーーーい不良みたーーーーい。じゃなくて、菓子よこせっての」
「俺から菓子貰えるとか思ってんじゃねーよばーかぜってーやらねー」
どうやら丸井君はお菓子をくれないようなので、悪戯させていただく事にしよう。
手元には悪戯用に購入したフェイスペイント用のマーカー。そして丸井の髪色に合わせた猫耳。これでやる事と言ったら一つしかないだろう。
「お菓子くれなかったらする事は一つだよねー」
語尾にハートマークを付けるようににっこりとそう言い放つなり、丸井の頭に猫耳を取り付けて赤のマーカーで両頬に三本の線。驚いて動きを止めている隙を狙ってケータイのカメラを起動してピロリーン☆という音と共に写メってやれば終了だ。
「てめ、くっそこのやろ!やりやがったな!!」
「だから言ったじゃん。『Trick or treat?』ってさ」
言いはしたが、丸井の事だからもしかして意味を分かって居ない可能性もある。赤也だったら100%意味わからないだろう。赤也の所に行く時はちゃんと日本語で言ってあげることにしよう。意味分からないままに悪戯したら赤目モードで追いかけられそうで怖いし。
「だからって悪戯すんの早過ぎだろぃ!ったくよ、マジで悪戯するとか信じらんねー」
「え、何、もしかしてお菓子準備してくれてた…っぽいね」
丸井のポケットからマーブルチョコの筒がひょっこり覗いているのを発見。なんだ、準備してくれていたのかと思うと悪い事をしたという気分になる。まあ、してしまったものはどうしようもないのだけれど。
「…う、うるせー、これはお前にやるやつじゃねーよ!俺が食う分に決まってんだろぃ?!」
「とか言う割にはどもってますよ丸井さーん」
ニヤニヤ笑って近寄れば、丸井が恥ずかしそうに頬を染めてそっぽを向く。うん、他のテニス部レギュラーには中々見られない反応で可愛いじゃないか。ついでのようにポケットからマーブルチョコの筒を抜き取る。ご丁寧に紫色のリボンが結んである。
「…ん?」
抜き取ったマーブルチョコの筒の重さに、首を傾げた。筒を振ってみる。カラカラと乾いた音。
「………丸井くんよ…」
「い、一応入ってんだろぃ!ていうか悪戯した上に菓子貰えるとか思ってんじゃねーよ」
丸井、我慢しきれずに食べちゃったんだね…。音から判断するに、多分中には一粒。よくて二粒のチョコしか入っていないだろう。丸井らしいと言えば丸井らしいけれど。
とりあえず、さっきの写メは幸村に送っておくとしよう。中々に良い映りだった。きっと丸井はその写メで幸村にからかわれるのだろう。ご愁傷様。
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