仁王発見!



そういえば、今日はあの目立つ髪色を見ていない。日の光を浴びてキラキラ輝くあの髪を。…まさか、誰かに変装してる…とか。あの男ならやりかねない。そんな事を思いながら、校舎裏を歩く。

「んーと、収穫は上々…ってところかなー?」

校舎裏に確かベンチがあったはずだからそこで今日貰ったお菓子を確認してみよう。少しワクワクしながら校舎裏のベンチを目指して歩く。校舎裏の木の傍に置かれたベンチは案外と日当たりも良く、座り心地も良かったりする。快適であるそこはあまり訪れる人もいないらしく、結構な穴場だ。

「…って、先客いるし」

目的地に到着したかと思えば、そこは既に先客に占領されていた。そして、占領していたのは日に輝く髪を持った男。

「仁王、邪魔ー!退いて!!」

ベンチを丸々占領して横になって寝られては座る場所などあるはずも無い。ゆさゆさと肩を揺すれば、低く唸る。薄らと開いた目が私を捕らえると、のそりと身体を起こす。

「ベンチ占領すんなってば。隣座るよー」
「…んー、」

一応断ってから隣に座れば、起き上がった仁王が再び舟を漕ぎだす。どんだけ眠いんだ、こいつは。そんな事を思いながら籠の中に入ったお菓子を一つ一つ確認していく。友人に貰ったもの、クラスメイトに貰ったもの、テニス部レギュラーから貰ったもの、中には先生から貰ったものもある。ハロウィンをすっかり忘れていた友人などにはタトゥーシールを貼らせて頂いた。因みに柄は黒猫とかコウモリとか。男子にはドクロとか。あとはまあベタに猫耳つけて写メらせてもらったり。ちなみに皆さん結構ノリノリでした。イベント好きだよね、皆。

「…ってオイコラ。勝手に膝枕とか誰の許しを得た」
「…俺…」

俺じゃない、許しを得るべきは私だろう。そう思ったりしたが、この男には何を言っても通用するまい。諦めるのが一番楽な方法なのだと私は身を持って知っている。

「んで、仁王。『Trick or treat?』」
「…ん〜」

人の膝の上でもぞりと動いたかと思えば、足元に置いていた荷物を漁って何か袋を取り出す。それを自分の頭上、つまり私の太腿の横に置く。

「なにこれ、マシュマロ?」

スーパーなんかで売ってる期間限定ハロウィン仕様のマシュマロだった。どうやらマシュマロはカボチャの形をしているらしい。そして色がほんのりオレンジだ。

「マシュマロみたらお前さん思い出したけぇ…」

は?と思いながら膝の上に乗った仁王の頭を見下ろせば、眠気でとろんとした目が私を見上げる。そして片手を上げたかと思えば、その指先を私の唇に押し付ける。

「ここ、ふにふにしててマシュマロっぽいじゃろ」

食ったら美味そうじゃ、と柔らかく溶けた顔で笑う。そのセリフと笑顔に、自分の顔がボボッと音がしそうなほどに赤くなったのが分かる。それが無性に恥ずかしく思えて、仁王の頭が膝に乗っている事などお構いナシに立ち上がる。

「知るか馬鹿!仁王になんて絶対食わせてやらんわ!!」

お菓子の入った籠と、今ほど貰ったマシュマロを忘れずに引っ掴んで脱兎のごとく駆けた。恥ずかしいわ、くっそ!仁王のばかたれ!!






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