柳発見!



もしかしたらここだろうか、と思って訪れたのは図書館。図書館独特の静まり返った空気は、私は嫌いではない。広い図書館をぐるりと見回してみれば、書架の間にすらりとした姿を見つける。

「柳、みーつけた」

足音を忍ばせて背後から声を掛けてみたものの、柳は特に驚くこともなく私の方へと振り返る。

「お前がハロウィンの仮装をする確立は100%、そしてその仮装が魔女の確立は83%だったが…」

振り向くなり何を言うのかと思ったら確率の話。しげしげと私の格好を見ていたかと思えば、柔らかく微笑む。

「可愛いな。似合っているぞ」
「……アリガトウゴザイマス」

普段私に対して可愛いとかそんなことは一切言わないくせに、こういうときだけそういうセリフを普通に言ってのけるのだ、この男は。普段言われ慣れていないだけに、いざ言われると反応に困る。とりあえずお礼を言ったら何故か片言だった。ちなみに意識してそう言ったわけではない。

「それで、俺に言う事があるのだろう?」
「…『Trick or treat?』」

見透かされているようでどうにも居心地が悪い。いや柳はいつもこんなだけれど私に対してこういう風に物を言うことはあまりないから私が慣れていないだけか。

「きちんと準備してあるに決まってるさ」

その言葉と一緒に手渡されたのは、数枚のクッキー。売り物のように綺麗だけれど、よく見ると分かる。これは、手作りだ。

「え、これ手作りだよね?」
「姉が昨日張り切って作っていたのを分けてもらった」

柳のお姉さんの手作り。それを聞いて私の表情が輝く。だって嬉しい。柳のお姉さんのお菓子は以前作りすぎたからと柳が持ってきた事があったのだが、それがとても美味しかったのだ。売り物だと言っても通用するだろう。
クッキーの色が少しオレンジがかっているのは、多分生地にかぼちゃが練りこんであるのだろう。そしてクッキーの上には刻んだかぼちゃのタネ。手が混んでいる。

「ありがとう!お姉さんにも宜しく伝えておいて」

嬉しさで顔が緩みまくりだ。ひらりと手を振って踵を返す私の背後には少し頬の赤い柳の姿があっただなんて分かるわけがない。






TOP

「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -